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8党首討論の詳報

2017年10月9日

 8政党による8日の党首討論会での冒頭発言の要旨、討論・質疑の詳報は次の通り。

【冒頭発言要旨】

◆安定政治で国守る 自民・安倍晋三総裁

 安定した政治の下、この国を守り抜く。北朝鮮の脅威に対して外交力を発揮し、国民の平和で幸せな暮らしを守る。日本の未来、子どもたちの未来を切り開くために全力を尽くす。

◆国民ファーストで 希望・小池百合子代表

 国民ファーストの政治で日本に希望をもたらす。今は百歳まで生きる人生だ。例えば、高齢者が病院に行かずに大学に行けるような、新しいパラダイム(考え方)へと変えていきたい。

◆教育負担の軽減を 公明・山口那津男代表

 結党以来、教科書の無料配布など子育て支援に取り組んできた。今回の公約では教育負担の軽減を掲げた。幼児教育の無償化、私立高校の授業料実質無償化、給付型奨学金の拡充に取り組む。

◆暴走政治に退場を 共産・志位和夫委員長

 安全保障法制、特定秘密保護法、共謀罪。こんなに憲法をないがしろにしてきた政権はかつてない。共産党の躍進で安倍暴走政治に退場の審判を下し、新しい政治をつくる選挙にしていきたい。

◆民主主義取り戻す 立憲民主・枝野幸男代表

 まっとうな政治を取り戻す。誰かがどこかで決めて、多くの国民がそれに従わなければならない。これは民主主義ではない。国民の草の根の声を踏まえた本当の民主主義を取り戻す。

◆全国で高校無償化 維新・松井一郎代表

 身を切る改革によって教育を無償化したい。今、大阪では、改革による財源で、私学を含めて実質的に高校まで無償化を実現した。これをぜひ、全国で行いたい。皆さんの支援を頂きたい。

◆国民生活を最優先 社民・吉田忠智党首

 安倍政権の是非や憲法が問われる大事な選挙だ。国民生活最優先と憲法を生かす政治を掲げる。子どもや女性、高齢者など社会的に弱い立場の皆さんの政策をしっかり掲げて戦う。

◆自主憲法の制定を こころ・中野正志代表

 自主憲法の制定、消費税マイレージ制度の導入、被災者の自立の徹底支援を進める。敵基地攻撃能力の保有を目指す。次の世代に熱いメッセージを残していける戦いにしたい。

     ◇

 【経済・財政・消費税】

 安倍晋三首相(自民党総裁) 少子高齢化は待ったなしだ。今年中に政策パッケージをまとめなければ間に合わない中で、この選挙で消費税増税の使い道を問う。

 松井一郎日本維新の会代表 消費税増税を国民にお願いするなら、国会議員が身を切る改革を行って、国民との約束を果たすべきだ。

 枝野幸男立憲民主党代表 日本経済の低成長が続いている要因は、国内消費にあるのではないか。格差の拡大で貧困が増え、購買力を減らし、消費にマイナスになっているのではないか。

 安倍氏 人口減少の中で、経済を成長させる。子どもの相対的貧困率は安倍政権で初めて改善した。希望の党は消費税増税を凍結すると言っている。企業の内部留保に課税するとも言っているが、企業が(海外に)出て行き空洞化する。安定財源にもならない。

 小池百合子希望の党代表 地方や中小企業の成長、一人一人の景気の実感が伴ってない中で消費税増税はどうなのか。いったん立ち止まって考えるべきだ。

 中野正志日本のこころ代表 立憲民主党は(旧民主党の)菅直人内閣そのものと言える。菅内閣では経済がめちゃくちゃだった。消費税率の10%への引き上げも、景気が落ち込んでいたのに突然ぶち上げた。今回、立憲民主党は消費税を上げないと言っており、矛盾している。

 枝野氏 菅内閣の時には、実質経済成長率は今より良かったはずだ。消費税引き上げに関しては、経済状況や、旧民主、自民、公明三党で合意した税収の使われ方の前提、法人税や所得税とのバランスが崩れており、容認できない。意見が変わるのは当然だ。

 安倍氏 今回、消費税収の使い道を変えるので、二〇二〇年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化することはできない。いつまでに(達成する)ということは数字を精査し、新たな目標を示す。現段階では十分に材料がそろっていないため示せない。(教育無償化などに使う)二兆円は消費税収の使い方を変えて充てる。社会保障費は安定財源である消費税で賄うのが一番ふさわしい。消費税率は経済を見ながら上げる。上げるべきでないときには、正しく判断して上げていない。

 小池氏 これまでの延長線で(消費税収の)使途を変えるという弥縫(びほう)策では足りない。内部留保への課税は、アベノミクスの果実をもっと社会に還元するためだ。ユリノミクスという言葉を掲げているが、消費者に寄り添ったマーケティングをベースにしたものと考えてほしい。消費者の共感を得て進める。

 安倍氏 まだデフレから脱却していない段階で、金融政策の出口戦略に触れるのは時期尚早だ。物価2%上昇の目標を、どう達成し、出口戦略に向かうかは日銀の総裁に任せている。

 【憲法】

 安倍氏 憲法論議は、最後は国民投票で決める。国民の中で深い議論がされなければいけない。(国会の)憲法審査会の論議が建設的に活発化する必要があるだろうと(自らの憲法改正提案で)一石を投じた。国民の議論が深まり、審査会で各党が案を持ち寄り、建設的な議論が進むことを期待したい。

 小池氏 憲法なので国民の理解が得られるかどうか。自衛隊という実力部隊に対する国民の信頼。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽(いんぺい)問題は、行政の信頼をそいだ。首相の(憲法九条一、二項を維持し、三項で自衛隊を明記するとの)話だが、もともと(政府は自衛隊を)合憲と言ってきた。それに(明記で)防衛省と自衛隊の関係が逆転してしまう。大いに疑問がある。

 山口那津男公明党代表 世論調査などで、国民の半分以上が、自衛隊明記に理解を示していない。自民党の議論を見守る。成熟した国民理解の下で、改憲の国会発議や国民投票を迎えるべきだ。今はそこまで至っていないとの認識だ。

 志位和夫共産党委員長 自衛隊と憲法九条は両立し得ない。自衛隊を書き込めば、違憲の法律を合憲化することになる。社民、立憲民主両党と協力し、野党共闘の力で流れを食い止める。

 吉田忠智社民党党首 安全保障関連法が強行され、米国の戦争に巻き込まれる危険性もある。自衛隊を書き込むだけでは済まない。反対の世論を広げる。

 松井氏 教育無償化を憲法に明記すべきだ。安倍政権の間は、改憲議論をしないというのはあまりにも幼稚だ。

 枝野氏 安全保障法制を追認するような改憲には賛成できない。集団的自衛権の一部行使容認は認めておらず、自衛隊を書き込むことに賛成できない。

 中野氏 はっきり自衛隊を明記して日本の安全を守るべきだ。

 【外交・安全保障】

 安倍氏 日本は北朝鮮と対話し、約束し、二回も裏切られた。話し合いを時間稼ぎに使われた。もうだまされるわけにはいかない。

 志位氏 (北朝鮮の)核・ミサイル開発を断じて容認できない。国連安全保障理事会決議の厳格で全面的な実行が必要だ。全ての選択肢がテーブルの上にあるという米国の立場支持を危惧する。先制的な軍事力行使で対応したら、破滅をもたらす戦争になる。

 安倍氏 全ての選択肢がテーブルの上に載っている。米国のこの方針を支持する。そうしたことも含めて圧力がかかっている。米国の軍事的圧力に北朝鮮は相当ろうばいしている。二〇〇三年に中国が北朝鮮への石油供給を止め、(各国間で事前折衝が行われていた)六カ国協議に戻ってきた事実もある。圧力に意味がないということは全くない。

 吉田氏 沖縄県名護市辺野古への米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)移設問題を巡り、民意を踏みにじって建設が強行されている。再考すべきだ。

 安倍氏 沖縄に過度に米軍基地が集中している現状を変えなければいけないと努力してきた。住宅地に囲まれた普天間飛行場を固定化しないため辺野古に移転する。

 枝野氏 辺野古移設について、これまでの経緯、現状の安全保障環境についてゼロベースで検証を行う。現在の強引なやり方では、むしろ日米安保にも悪い影響を与える。

 【原発・エネルギー】

 吉田氏 小池氏が「原発ゼロ」を掲げ、原発政策が大きな争点となったのは本当に良かった。ただ小池氏は原発再稼働を認める立場だ。原子力規制委員会は東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が新規制基準に適合したとする審査書案を了承した。東京都は東電の株主だがどう思うか。再稼働も駄目だと立場を修正してもらいたい。そうすれば共闘できる。

 小池氏 規制委が総合的判断として(事実上の)合格とした。今後は地元の新潟県が(事故時の)広域避難計画についてどのような形で、担保していくのか検討するのだろう。再稼働については是としていて、むしろ原発ゼロへの工程表を書いていくべきだと現実的に考えている。

 枝野氏 東日本大震災と原発事故への対応は、全力を尽くしたが至らない点がたくさんあった。だからこそ一日も早い脱原発に向けた責任と役割を背負っている。原発再稼働は、現在はエネルギーの需給もうまくいっているのでそもそも必要ないかもしれないが、広域避難計画は誰が実効性を担保するのか。担保せずに再稼働することは周辺住民の理解が得られない。

 安倍氏 もちろん自治体任せではなく、国が責任を持って自治体の避難計画作成を支援する。

 小池氏 今後、どのように原子力技術を日本に残していくかも重要だ。研究の部分と、今後も核燃料サイクルを存続か否かは総合的に考えていくべきだ。世界中の原発が老朽化し、廃炉ビジネスが日本の大きな役割となる。全部なくしてしまうと技術者を育てないことになる。

 【社会保障・労働】

 山口氏 私立高校の授業料実質無償化を推進すべきだ。

 安倍氏 少子化を克服するため、社会保障制度を全世代型の社会保障に変える。私立高校授業料の無償化は検討していきたい。

 枝野氏 衆院解散直前までいわゆる「残業代ゼロ制度」の法案(働き方改革関連法案)が準備されていた。選挙に勝ったら再びこれを成立させようとするのか。時代に逆行している。

 安倍氏 連合とも合意し、時間外長時間労働の上限を決めた。働き過ぎを変え、ブラック企業は罰すものは罰する。取り締まるのは当然だ。

 小池氏 消費税増税に関する二〇一二年の自民、公明、民主(当時)の三党合意で行うことになっていた「総合合算制度」は今回の消費税の使途見直しでも入れておらず、約束が違う。全世代型社会保障の名が泣くのではないか。

 安倍氏 医療と介護の自己負担額を合算しての限度額の導入は既に法制度化している。残された障害福祉についてよく勉強していきたい。

 小池氏 シニアの方々は大学で学び直したらどうか。シルバーパスよりも、学割を使う方がプライドを保ち、社会の一員という帰属意識ができる。病院より大学に行き、社会保障費用を下げる発想だ。ベーシックインカムは将来的に考えていくべきだ。会議体をつくっていきたい。

 【政権の枠組み】

 安倍氏 自民党と公明党は風雪に耐えた連立与党だ。野党時代にも結束して政権奪還を果たした。政党の離合集散で政権奪還を目指したわけではない。(七月の)東京都議選では公明党は小池都政を支援した。

 山口氏 都議選では自民党東京都連と対応が分かれたが、国政では自民党と公明党で結束し、連立政権の運営をすることにいささかの揺らぎもない。

 小池氏 希望の党は新しくできたばかりだ。無所属議員の参加見込みもある。今、候補者の最終調整に入っている。過半数の二百三十三人の候補者をそろえたから全員当選というわけではないが、最後の努力をしている。(首相指名候補については)選挙結果を踏まえながら考える。

 安倍氏 与党で過半数を維持すれば政権を継続していく。自民党総裁として、過半数を取れば当然、首相指名を受ける候補になる。前回、前々回の衆院選は国民の皆さんに大きな力を頂き、大勝利を果たした。しかし自民党は今まで二百四十前後の議席しか取れてこなかった(選挙もある)。今回は十議席定員を減らした中での選挙だ。

 小池氏 安倍一強政治に緊張感をもたらし、お友達政治、しがらみ政治をただしていく意味で戦う。その中で今後どうなるのかは、しっかりと戦い抜くのがまずあり、その結果としての判断になる。安倍一強政治を変えていくのが大きな旗印だ。ゴルフ場で言うならば右と左があり、真ん中が抜けている。そのフェアウエーど真ん中として有権者に選択肢を出したい。

 吉田氏 立憲民主党ができ、社民党の政策に近づいてきた実感がある。(共産党を含めた)三党で結束し、憲法改正の発議ができない三分の一以上の議席を取り、どのような連携ができるかを議論していきたい。

 【森友・加計(かけ)問題】

 安倍氏 李下(りか)に冠を正さず。(学校法人「森友学園」と「加計学園」問題を巡って)疑いを持たれることは当然で、もっと慎重であるべきだった。だが、私が影響力を行使したことは何も証明されていない。

 小池氏 情報公開が足りない。国民は十分納得していない。公文書管理も大変重要な課題だ。

 安倍氏 一部説明の足りない点や(答弁)姿勢について反省すべき点はある。私が関与したと言う人は一人もいない。

 志位氏 臨時国会冒頭に衆院解散を強行した理由は疑惑隠し以外ない。

 安倍氏 疑惑隠しではない。

 吉田氏 疑惑が晴れていない。安倍昭恵首相夫人や、加計孝太郎理事長を国会招致すべきだ。

 安倍氏 何度説明しても、なかなか信用してもらいにくいのも事実だ。求められれば丁寧に説明していきたい。私が妻に代わって十分話している。加計氏は本人が決めることだ。

 【衆院解散の大義】

 安倍氏 北朝鮮は脅威だ。国民の信を得てしっかり圧力をかけていく。消費税の使い道(変更)を問う。政権交代のリスクがあるのにあえて信を問う以上、説明できる理由がなければならない。

 【政治姿勢・手法】

 安倍氏 政権選択の選挙だ。過半数を取った勢力が政権を取る。東京五輪・パラリンピックを成功させる。

 小池氏 安倍一強政治をただすため、選択肢を示す。政権(獲得)を目指すことは大きな目標だ。北朝鮮情勢が厳しい中で、リアルな政治を進めていくことで(希望の党内は)一致している。

 山口氏 小池氏と協力し、東京五輪・パラリンピックを成功させる。小池氏には成果を出すことに(東京都知事として)一生懸命取り組んでもらいたい。

 志位氏 国政選挙では単独でずっと戦ってきたが、選挙方針を変えた。共産、立憲民主、社民三党でできる限り協力、連携したい。自衛隊や天皇制問題に関し、党綱領を改定した。原則を守りながら、幅のある対応ができるようになった。

 枝野氏 暮らしの足元に光を当てる政治勢力が消えるわけにはいかないので、党を立ち上げた。

 松井氏 地方分権は必要だ。小池氏と分権改革を全国に広げたい。希望の党とは政策が一致している。

 中野氏 今は一人だが、意地がある。結党の初心を大事にしたい。

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