• 東京新聞ウェブ

全国

党首ら第一声 有権者は

2017年10月10日

 衆院選が10日公示され、各党の党首や候補者が一斉に街に飛び出した。小池新党、民進党分裂、リベラル・護憲派の共闘と、野党を取り巻く状況は目まぐるしく変わり選挙戦は3極の構図に。改憲の是非や脱原発、少子高齢化、消費税増税−。山積する課題への答えを見極めようと、有権者は党首らの第一声に耳を傾けた。

◆自民・公明 原発事故こそ国難だ

 自民党の安倍晋三首相の第一声は福島市郊外。吾妻山の迫る、田に囲まれた空き地で、住民らは「何でこんな田舎さ来んだべ」「やじ飛ばされっからかな」と遠巻きに見守った。

 集まった支持者らは二百人ほど。安倍氏は午前十時五十分に登場。稲刈り前の田を背に「東日本大震災、この福島が自民党の政権奪還の原点。復興は進んでいる」と力説、北朝鮮の脅威も強調した。耳を傾けた無職湯上要(ゆがみかなめ)さん(80)は「福島の国難はやはり原発事故。復興はまだまだ道半ば。避難解除されても若い人は戻れず、廃炉にもまだ何十年とかかる。しっかり対応してほしい」と期待した。

 近所の喫茶店経営尾形千万子(ちまこ)さん(70)は「避難した子へのいじめ、避難者の捨てたペットの犬猫の問題…。私らの小さな声を聴き、目先の小さな問題から解決して。国難なんて大げさに言わずに」と話した。

 東京・王子の事務所であった公明党の太田昭宏前代表の第一声。近くの建築現場で作業中の中野俊一さん(49)=新宿区=は「景気が良くなったというが、全く感じない」。同僚の男性(54)=練馬区=は「自公政権は他よりまし」と話した。 (辻渕智之、中村真暁)

◆希望・維新 しがらみ政治変えて

 「また帰ってきました」。希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は、衆院議員時代の出身選挙区だった東京10区の池袋駅西口前(豊島区)で第一声。ダークグリーンのジャケットに薄緑のスカーフをまとい、街宣車の上に姿を見せると、大きな拍手が湧いた。

 既存の政治との違いを強調し、加計(かけ)・森友疑惑に国民が納得していないとして「政治への信頼を取り戻す選挙。安倍一強を終わらせようではありませんか」と語ると、聴衆から「そうだ」と声が上がった。会社経営、内堀日出一(ひでかず)さん(74)=豊島区=は「小池さんの型にはまらないところがいい。国民の分からないところで物事が決まるような自民党のしがらみ政治が変わってほしい」と期待した。

 ただ、演説では都知事としての仕事ぶりをアピールし「希望」「生きがい」のフレーズを繰り返す一方で、改憲や消費税など具体的な政策にはほとんど触れなかった。同区の主婦(79)は「今問題になっていることへの意見が聞けなかった」と物足りない様子だった。

 希望と選挙協力する日本維新の会の松井一郎代表は、大阪市の繁華街・ミナミの街頭で演説した。 (山田祐一郎)

◆立憲民主・共産・社民 憲法守る政党を選ぶ

 「上から目線で国民に言うことを聞かせる政治を、国民の声に基づいて下から押し上げる政治に変えていこう」。立憲民主党の枝野幸男代表は午前九時三十五分、仙台市青葉区の公園で第一声を上げた。

 四歳の長女を抱いて演説を聞いた主婦中村早恵(さきえ)さん(38)=同区=は「前向きな発言で、人のために政治をやってくれそうだと感じた」と評価した。

 福祉施設職員西新太郎さん(54)=同区=は、改憲の是非に触れなかった点に「希望の党との差異を、もっとはっきりと打ち出してもよかったと思う」と注文。主婦山本幾代さん(61)=同区=も「安全保障法制や改憲については、もう少し踏み込んだ内容を聞きたかった。よく考えて投票したい」と話していた。

 立憲民主は、共に九条改憲反対を掲げる共産党や社民党と各地で共闘している。東京・新宿駅西口で第一声を放った共産の志位和夫委員長の演説を聞いた無職小宮山トキ子さん(75)=新宿区=は「希望の政策の根幹は、自民党と同じという訴えには説得力があった。投票では、憲法を守ってくれるかどうかをポイントにしたい」と話した。 (清水祐樹、榊原智康)

主な政党の公約

新聞購読のご案内