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定時制の生徒も政治の主役 川崎の大学生、自ら企画し授業

2017年10月14日

定時制高校生に選挙への関心を持ってもらおうと授業をする那須野純花さん(左)=川崎市高津区の高津高で

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 衆院選と市長選の投票が同じ二十二日となった川崎市の市立定時制高校で、地域のボランティア活動などに取り組む大学二年、那須野純花(あやか)さん(20)=同市幸区=が、自ら申し出て選挙啓発の授業をした。小中学校でいじめられた体験が背景にあるといい「生きづらさや貧困に悩む定時制の高校生にこそ、政治を身近に感じてもらう有権者教育が必要」と話す。 (小形佳奈)

 授業は十一日夜、高津高(高津区)であり、定時制の三年生四十六人が聴き入った。多くは今回の選挙が初投票。生徒には「自分の街の気になるところ」を書き出してもらい、「川崎がどうしたら良くなるかをちょっとずつでも考えて。一人一人が政治の主役です」と投票を呼び掛けた。

 小学四年から中学卒業まで市内の学校で同級生からいじめを受けた。トイレの個室に閉じ込められ、水を掛けられたこともあったという。しかし、都内の高校に進学してから、緑の多さなど地元の魅力を再発見。街を良くしようと清掃ボランティアにも取り組んだ。

 十八歳で迎えた昨夏の参院選で初めて一票を投じたが、投票所でどう行動していいのか戸惑った。「投票について学校では教えてくれなかった。最初は物珍しくても、多くの若い人が二回目からは選挙に行かなくなるのでは」と問題意識を抱いた。

 市長選と衆院選に向け、同世代に投票してもらうために何かできないかと思案。九月下旬、キャリア教育に定評のある高津高の松本智春教諭(47)を訪ねて相談した。松本さんから「定時制には将来に夢を持てない生徒がたくさんいる」と聞き「定時制の人たちにこそ政治の力が必要」と痛感し、実施を決めた。

 授業を受けた佐藤優佳さん(18)は、仕事を掛け持ちしてひとり親家庭を支える母が投票に行くのを見たことがないという。「だから自分も関心がなかったけど、うちらがきちんと選んだら、小さい子たちも豊かに育つんだと今日分かった。投票に行きます」と前向きに話した。

 授業のほかにも選挙の仕組みなどについて動画を作成し、会員制交流サイト(SNS)で発信している。今回の選挙に向けた授業はこの日のみだが、今後の選挙でも取り組んでいきたいという。那須野さんは「政治を『自分ごと』にするムーブメントを同世代から起こしたい」と意欲的だ。

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