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「孫の日」じいじばあばに聞きました 残したい社会は

2017年10月16日

真剣な表情で候補者の訴えを聞くお年寄りら=15日、東京都台東区で

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 衆院選の投開票まで一週間。選挙期間中、唯一の日曜となった十五日は、日本百貨店協会が定めた「孫の日」でもある。未来の世代のために、政治に望むことは? 今、日本で最も話題を集める赤ちゃんがいる上野動物園(東京都台東区)を起点に歩き、おじいちゃん、おばあちゃんの思いを聞いた。 (松村裕子、内田淳二)

 激しい雨が降り、人出の少ない動物園前。六月に生まれたパンダの香香(シャンシャン)はまだ公開されていないが、「ゾウやキリンを見せたい」と、山形県最上町の農業早坂稔男さん(62)が四歳の孫を連れてやって来た。

 地元は少子高齢化、過疎化が進み、小学校も数年後に廃校になる。「東京ばかりでなく、地方も住みやすくしてほしい」。息子は別の仕事に就き、孫が農業を継ぐとは思っていないが、「せめて地元で就職できるように」と願った。

 動物園にほど近い旧下谷小学校(台東区)では、町会の運動会が行われていた。雨で運動場が使えず、体育館は約三百人の住民で満杯に。そこへ男性候補者も姿を現し、玉入れに参加した。選挙演説はなく、たすきも外していた。

 三歳の孫ら親子三代で参加した台東区の尾高光寛さん(67)は「地元に住み続けられる経済政策を」と注文する。経営する電気機械器具卸会社は従業員十数人。「小さな会社や店で廃業しているところもある」と心配し、「子や孫が相続税が払えず、ここに住めなくなるようじゃ困る」。

 東京メトロ千駄木駅前(文京区)。選挙カーが流し、別の候補者が街頭演説していた。聞いていた台東区の元ネクタイ製造業高橋清司さん(72)は「憲法九条を変えたら戦争をする恐れがある。戦争をしない国を続けて」。母親のおなかにいる時に父親がフィリピンで戦死し、父親の顔を知らない。独身で子も孫もいないが、「ボランティアでバドミントンを教えている。その子たちに、自分のような目に遭わせたくない」。

 谷中霊園(台東区)を散歩していた荒川区の主婦入原敏子さん(60)は、四人の孫の稽古事などの費用を援助している。自身が子育てしていた頃は経済が伸び、家計の心配は薄かった。「景気が良くなっていると言われても、子どもたちには実感がない。経済的に安定して暮らせる社会になってほしい」

 活気あふれるアメヤ横丁(台東区)に買い物に来た千葉県印西市の元医師加藤昌義さん(82)も、六人の孫の教育費を一部負担中。「これからは少子高齢化がもっと進む低成長の社会」と憂い、「孫たちが普通の生活ができる社会をつくっていけるか。政治はちゃんと責任を果たしてほしい」と話した。

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