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金融緩和の論戦低調 識者「政策リスク国民選択できず」

2017年10月19日

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 「アベノミクス」の柱とされる大規模な金融緩和が衆院選の選挙戦で論戦の対象になっていない。導入から四年半がたち、政策を終える「出口」での経済混乱の可能性など、識者が先行きを心配している状況にあるにもかかわらずだ。与野党が正面から向き合わなければ、有権者は重要な経済政策の選択さえできない。 (渥美龍太、白山泉)

 金融緩和は、日銀が大量の国債を民間の金融機関から買って代わりにお金を渡し、世の中のカネ回りを良くする政策。二〇一二年の衆院選で、野党時代の安倍晋三自民党総裁が「次元の違う金融緩和を」と看板政策に掲げた。政権交代後、日銀の総裁に緩和を推進する黒田東彦(はるひこ)氏を任命し、一三年四月にスタートした。

 開始から二年で前年比2%の物価上昇率を実現させる目標を掲げたが、四年半が過ぎても達成できない。緩和が長引くと「副作用」として将来、日銀が金利を上げたときに日銀にお金を預ける民間銀行への利払いが急増。日銀自身に損失が出て、穴埋めに税金が投入されたり、金融市場が混乱したりする危険がある。

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 「出口の問題は深刻」。大手金融機関のトップも先月、こう漏らす場面があった。しかし選挙戦の現場では話題にならない。

 各党の公約や主張をみると、大規模緩和を主導した自民党はデフレ脱却という金融緩和の「成果」を語るが、出口への言及に乏しい。野党では、希望の党が「当面維持した上で出口戦略を模索」、共産党が「破綻が明白になった。路線を転換」と触れているのが目を引くぐらいだ。

 緩和を進めてきた黒田総裁の任期は残り半年ほど。記者会見では与党と同じく「成果」は語るが、出口のリスクにはほとんど触れない。後任が話題となる時期にさしかかったのに問題点が一般に知られているとは言い難い。法政大の真壁昭夫教授は「リスクが高まっているのに各党の議論がほとんどみられないのはおかしい」と指摘。その上で「今の政策を本当に続けて良いか転換を模索するべきか、このままでは国民も分からない」と苦言を呈した。

主な政党の公約

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