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カジノ 立ち止まり議論を 解散で実施法案先送り

2017年10月19日

樋口さん(右)の呼び掛けでシール投票する女性=横浜市中区で

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 衆院選投開票が迫る中、カジノを含む「統合型リゾート施設(IR)」について再考を求める声が上がっている。衆院解散でカジノ解禁の具体的なルールを定める「実施法案」の国会提出は先送りになったものの、政府の推進方針に変わりはない。治安悪化などを懸念する市民グループなどは「改めて議論を」と訴える。 (原昌志)

 「ほとんどの市民は反対なのに、無視して進めるのはやっぱりおかしい」

 選挙戦終盤の十八日、横浜市中区のJR桜木町駅前。通行人にカジノの是非を問い掛けるシール投票運動をする市民グループ代表の主婦樋口敦子さん(51)=同市中区=は疑問を唱えた。七月から始めて約九千人分の回答が集まり、うち約85%が「カジノはいらない」に投じたという。

 横浜は大阪や長崎、宮崎と並んで、地元経済界や行政に誘致の動きがあり、IRの有力候補地とされる。経済活性化が最大の誘致理由だが、「ギャンブルに頼った活性化は邪道と思う。せっかく選挙があるのだからもう一度立ち止まって是非を考えて」と話す。

 カジノ推進法は昨年十二月の臨時国会で、野党だけでなく公明党の一部議員も反対する中で可決された。一年以内をめどに定めるとした「実施法」に向けて七月末、政府の有識者会議はたたき台となる報告書をまとめた。

 報告書はギャンブル依存症対策として、日本人の入場回数を規制するため、マイナンバーで本人確認を行うことなどを提言。だが、八月に各地で開いた公聴会では賛否両論が噴出した。

 東京会場で意見陳述した東京都足立区のグラフィックデザイナー木村芳正さん(60)は「カジノは外国人観光客の誘致が触れ込みだったが、実際は日本人の客を取り込まないと成立しない、と言われる。本当にそんなものが必要なのか。一から議論してもらいたい」と訴える。

 法律家や学者らでつくる全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会は、衆院解散を受けて九月二十八日、「各党にはカジノ合法化に反対する政策を掲げていただきたい」との声明を出した。

 事務局長の吉田哲也弁護士は「入場規制を厳格にしたらカジノの収益が上がらなくなるから、本気で規制するとは思えない。依存症や多重債務問題など弊害の解消が本当にできると思っているのか」と指摘。「優先度が低いのか、選挙戦でも各党はほとんど触れていない。選挙後、このまま深い議論がないまま進むことが心配だ」と話している。

<統合型リゾート施設(IR)の整備見通し> 今年12月までをめどとするカジノ実施法が成立した後、国土交通相が基本方針を策定。希望する都道府県などが事業者を公募・選定し、具体的な計画を国に申請する。国の認定手続きを経て事業者が施設を建設するが、工事に3年程度はかかるとされ、開業は早くても2020年以降となる見通し。

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