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投票所、バリアフリー考 筆談ボード備え 手話通訳者も

2017年10月20日

文字や数字を指さしたり、自分で文字を書き込んだりして意思疎通を図る「筆談ボード」=東京都文京区で

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 障害者差別解消法の施行後初となる衆院選が、間もなく投開票を迎える。法により障害者への配慮が義務付けられたことを受け、各地では投票を巡るバリアフリー対応が進むが、課題も少なくない。東京都内の取り組みを探った。 (中村真暁、増井のぞみ、神野光伸、林朋実、唐沢裕亮)

 耳や会話が不自由な人が、あらかじめ用意された文字や数字を指さしたり、自分で書き込んだりして意思疎通を図る「筆談ボード」。文京区は衆院選に向け、区内すべての投票所にこのボードを用意した。

 都選挙管理委員会はこれまで、盤上の文章などを指さす「コミュニケーションボード」を区市町村選管に配布してきたが、筆談ボードはさらに進化させたもの。区の担当者は「より丁寧に分かりやすく」と話す。板橋、新宿、北の各区も全投票所に備える。

 文京区はこのほか、目の不自由な有権者向けに、投票所の入場整理券を入れた封筒に点字シールを貼って郵送した。ダイレクトメールなど他の郵便物と区別しやすいようにとの配慮だ。

 手話通訳者を用意する自治体も出ている。江東区は十八日、区役所など期日前投票所三カ所に手話通訳者を配置した。日野市は、昨年七月の都知事選から投票所への派遣を始めており、今回も実施する。

 一方、視覚障害者が各候補者の政策を知る点字選挙公報の配布方法は、区市町村によりばらつく。障害者団体などを通じて配る自治体もあれば、投票所に置くだけのところもあり、配布を区市町村に委ねる都選管は対応に頭を悩ます。

 日本盲人会連合の総合相談室長、工藤正一さん(68)は「参政権を行使する上で情報格差があってはいけない。障害者にも選挙情報が平等に行き渡るよう意識してほしい」と話している。

◆障害者どうサポート 「職員の対応、工夫が必要」

 障害があるなどして自力で投票ができない場合、どのようにして一票を投じるのか。

 都選管によると、障害やけがなどで字が書けない人の場合、投票所の投票管理者が立ち会う人と代筆する人を指名し、投票の手助けをしてもらう。

 ただ、先天性脳性まひで文字が書きづらい大阪府の男性はヘルパーによる代筆投票を求め訴訟を起こしており、今回の衆院選期日前投票でも同行者による代筆が認められないことから投票を断念した。

 介助者が必要な車いす利用者の場合も、投票所内の介助は投票所の従事者に交代する。

 視覚障害者は、投票所で点字用の投票用紙と点字が打てる点字器が渡される。開票時は、障害者団体が推薦した点字を読める人らが判読する。聴覚障害者は筆談ボードなどで対応する。

 全日本ろうあ連盟の小椋武夫理事は「選挙、投票の業務に従事する職員に対し、聴覚障害者への対応を周知するなどの工夫が必要だ」としている。 (唐沢裕亮)

◆投票所などでの主なバリアフリーの取り組み

・手話通訳者の派遣

・聴覚障害や会話が不自由な人向けの「筆談ボード」

・指さしで意思を伝える「コミュニケーションボード」

・視覚障害者向けに点字や大きな文字を使った選挙公報配布

・点字シールを貼った封筒で投票所入場整理券を郵送

主な政党の公約

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