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職場で恩恵「一部だけ」 女性政策、掛け声とは裏腹に

2017年10月20日

再就職準備セミナーで育児や就職について話す女性たち=東京都荒川区のマザーズハローワーク日暮里で

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 安倍政権は看板政策の一つとして「女性活躍」を掲げる。しかし掛け声とは裏腹に、働き続けることを望む女性が、妊娠や子育てを理由に職場から押し出される状況は続く。衆院選の投開票日が近づくが、当事者たちは、改善に向けたわずかな期待を一票に託そうとしている。 (柏崎智子)

 「働いて社会とかかわりたい。このままでは自分が保てない」。今月上旬、東京都荒川区のJR日暮里駅近くにある「マザーズハローワーク日暮里」。主に女性を対象とした再就職準備セミナーで葛飾区の女性(32)が発言した。十一カ月の長女はフロア内の託児コーナーに預けた。

 携帯電話販売会社で派遣社員として約八年、フルタイムで残業もいとわずに働いた。しかし「育児休業はない」ことから、妊娠後に離職に追い込まれた。出産後に再就職を目指したが、次に立ちはだかったのは待機児童問題。区の担当者から「これから職を探す方の保育所入所は難しい」と告げられた。

 足立区の女性(32)は美容外科の個人病院に契約社員として十年間勤務していた。しかし年末に出産を控え、九月に退職を余儀なくされた。育休制度がなかったことに加え、職場の理解も乏しかった。

 妊娠後に体調が悪くなり、こなせる仕事量が減った。同僚からは「妊娠はあなたの都合。責任放棄だ」と責められ「こんなに立場が弱くなるのか」と苦しんだ。政府の「女性の輝く社会」などのメッセージを、妊娠前は好ましく聞いたが、今は「恩恵は大手企業で働く一部の女性だけ」と隔たりを感じる。

 「原則として非正規でも一年以上働いた人に育休を認めないのは違法なのに、いまだにまかり通っている」。労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員はため息をつく。「妊娠・出産にからむ退職強要などマタハラ関係の相談も相変わらず多い」

 マザーズハローワークの壁に張り出された求人票は「託児所付き」など子育てへ配慮があるものが多いが、社会保険への加入義務のかからない短時間パートも目立つ。同じビルにある若者向けのハローワークには対照的に「正社員を目指そう」と呼び掛けるポスターが張ってあった。

 足立区の女性はこれまでの選挙で、保育政策に積極的に見える候補や政党に投票してきた。しかし「本年度末までに待機児童をゼロにする」とした政府目標は延期され、あきらめの気持ちが勝るようになった。それでも「わずかな望みは捨てたくないので投票に行きたい」と考えている。

<マザーズハローワーク> 主に出産などで離職し、再就職を希望する女性を対象に、求人の紹介や個別相談、セミナーなどを行う。2006年に初めて全国12カ所に設置された。第2次安倍政権の女性活躍推進の方針に基づき拡充され、現在は21カ所。ほかに通常のハローワーク内で開かれている「マザーズコーナー」が173カ所ある。

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