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財政再建へ不安増 首相、消費税増収分を「人づくり」財源に

2017年10月24日

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 衆院選の勝利を受け、安倍晋三政権は年末までに、三〜五歳児の教育無償化など「人づくり革命」の政策をまとめる。選挙前に先送りを表明した財政再建や、十一月にトランプ大統領が来日する米国との通商交渉なども課題となる。 (桐山純平、矢野修平、白山泉)

 自民党は選挙戦で、二〇一九年十月に消費税率を10%に引き上げることを主張。その増収分を幼児教育の無償化や大学の奨学金拡充などの財源に充てることを公約の柱としてきた。年末までにまとめる教育関連の政策にかかる予算規模は、現時点で二兆円を想定している。

 一方で、安倍首相は選挙中、「全世代型の社会保障へ転換する」と繰り返してきた。年収五百九十万円未満の世帯を対象に、私立高校の授業料を実質無償化するという公明党の公約にも「検討する」と応じた。無償化の対象がさらに広がれば、支出はさらに増えることになる。

 消費税の増収分はもともと借金返済のために使う予定だったため、先送りされた財政再建の取り組みも課題だ。安倍首相は、政策に必要な経費を借金に頼らず税収でどれだけ賄えているかを示す「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」の黒字化を二〇年度に達成する目標を既に取り下げている。

 高所得者世帯も含めた教育無償化の政策を安倍政権が訴える中で、第一生命経済研究所の熊野英生氏は「政権は財政再建の軌道からどんどん離れていった」と指摘。来年新たにつくられる財政再建の道筋が明確でなければ、現在は財源の多くを借金から賄っている社会保障の安定性も揺らぎかねない。「全世代型の社会保障」どころか、将来の「不安感」が増すことになる。

 衆院選で目立った議論はなかったものの、通商分野は早速、二つの大きなヤマ場を迎える。十一月五日にトランプ米大統領が来日し、貿易赤字削減を狙って二国間の貿易交渉を求める可能性がある。日本側は応じない方針だが、北朝鮮情勢が緊迫化する中、摩擦を避けられるかが焦点となる。

 日本が議論を主導する米国抜きの環太平洋連携協定(TPP)も、十一月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)での大筋合意に向けて大詰めの調整に入る。意欲的だったニュージーランドが政権交代で慎重姿勢に転じる懸念があり、先行きは不透明だ。

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