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真の「政権選択」へ準備を 政治部長・金井辰樹

2017年10月24日

 衆院選前日の二十一日、台風21号が日本に向かい北上していた。全国の期日前投票所には長蛇の列ができた。翌日は投票が難しくなると考えた人たちが事前に投票を済ませようと並んだのだ。一時間以上待つ所も珍しくなかった。

 翌二十二日は案の定、荒天となったが、学校の校庭にできた大きな水たまりに足を踏み入れながら投票に向かう人たちを見かけた。

 最終的な投票率は戦後二番目に低い53%台。決して高くはないが、最悪のコンディションの中で、政治への思いを一票に託そうという有権者の姿に、民主主義が生きていると実感した。

 与野党とも「政権選択」を掲げた今回の衆院選。投票にあたり有権者は随分迷ったことだろう。安倍晋三首相は演説で、改憲についても、森友、加計(かけ)問題についてもほとんど語らなかった。政権への理解を求めるなら、政権が目指す政策や、政権への疑問について積極的に語るのが本来の姿だったはずだ。一方、希望の党は、政権を目指す構えを見せながら首相候補を持たず「反安倍政治」の選択肢を示さずに投票日を迎えた。

 選挙の結果、自公政権の存続が決まった。しかし与党トータルでみると公示前と比べ、わずかながら議席を減らした。野党に目を向けても議席を増やしたのは立憲民主党だけだ。その立憲民主党も候補者数はわずか七十人台で、政権選択の主役になる立場ではなかった。どの政党も政権を争う態勢と資格に欠け、判断材料が圧倒的に乏しい選挙だった。

 今回の反省をもとに、与野党は、選挙で政権を選ぶ政治のインフラを整える準備を始めるべきだ。与党は情報公開を徹底して政権が目指す道を明示し、野党は、まず政権を目指す枠組みを固める。選挙前の付け焼き刃ではダメなことが、はっきりしたのだから、選挙が終わった今から早速取り組んでほしい。土砂降りの中で投票に行った人たちのために、次の機会は、もっと分かりやすい政権選択になるのを期待する。

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