東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 統一地方選2019 > 千葉 > 記事一覧 > 記事

ここから本文
写真
 

「多様な声 反映する社会に」 千葉市議選に出馬も落選 筋ジストロフィーの渡辺さん

千葉市議選に立候補し、選挙期間中に有権者と話す渡辺惟大さん(左)=千葉市花見川区で

写真

 7日投開票された千葉市議選花見川選挙区に、幼い頃に筋ジストロフィーを発症し、電動車いすを使う渡辺惟大(ただひろ)さん(32)が、無所属新人で立候補した。「バリアフリーな千葉市へ」をスローガンに、障害者の通勤時のヘルパー利用の実現、低床バスの導入などを訴えた。初挑戦の結果は最下位落選だったが、渡辺さんは「人との出会いが大きな財産。選挙に挑戦できて良かった」と前を向く。 (黒籔香織)

 「小さな行動を大きな変化へ。行政から変えていきたい」。四日、渡辺さんは花見川区のJR新検見川駅前で訴えた。

 大きな声を出せないため、駅頭ではヘッドマイクで呼び掛け、右手で車いすを操作する。ひざの上にパソコンを置き出馬への思いを語った約四分の動画を流した。ビラを受けとってくれた人にはアイコンタクトをとり、「ありがとうございます」と頭を下げる。

 渡辺さんは生まれてまもなく筋肉が徐々に衰える筋ジストロフィーと診断され、中学生から電動車いすを使ってきた。

 千葉市内の高校を卒業後、早稲田大学に進学。在学中は身体障害者のトイレの介助に必要な制度がなかったため、大学に働き掛け、便座への移動などの介助を学生が担当する仕組みを作った。渡辺さんは「行動することが大切だと思ったきっかけ」と振り返る。

 同大院卒業後の二〇一二年に障害者の進学支援に取り組むNPO法人を設立。一四年には花見川区で訪問介護事業所を立ち上げた。バリアフリーの調査を商業施設に依頼した際「行政でないと応じられない」と断られ、障害者としての声を政治家に伝えても政策が実現されなかった経験から「自分が動いて現状を変えよう」と出馬を決意した。

 花見川選挙区(定数一〇)には、現職十人と新人二人の計十二人が立候補し、現職十人が当選した。渡辺さんは友人ら十五人ほどで選挙戦を乗り切ったが、選挙用のビラ八千部に証紙を貼る作業やスタッフとのスケジュール調整など、苦労が多かったという。

 街頭で渡辺さんは、障害のある子どもの親から「勇気をもらいます」と、同じ障害の女性から「会えて良かった」と声を掛けられ、勇気づけられたという。「多様な人の声が反映されることが社会全体のためだとの思いが強くなった」

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】