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水戸の新時代どう担う 3つの論点

再稼働の是非が問われる東海第二原発(手前中央)=東海村で(本社ヘリ「あさづる」から、松崎浩一撮影)

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 統一地方選で水戸市長選と市議選が十四日に告示され、二十一日に投開票される。県内で最も多い人口約二十七万人を抱える水戸市。新しい時代を担う市長や市議は、どんな街をつくっていくのか。選挙で論点になるとみられる三つのキーワードで課題を探った。 (山下葉月、水谷エリナ)

◆東海第二原発再稼働の是非

 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発の30キロ圏内に入る市は、再稼働する際、同意が必要な周辺6市村の一つ。新市長は任期中に是非の判断を迫られる可能性がある。原電は2021年3月に事故対策工事を終える計画を示しており、その後、6市村に再稼働の同意を求めるとみられる。

 立候補を表明している高橋靖市長(53)は、是非を判断する参考にするため昨年、市民と専門家の代表が半々ずつ入る有識者会議を設置。市によると会議はこれまでに2回開かれたが、原電側の説明が中心で、委員同士の議論は今後、本格化する見込みという。

 深刻な事故に備えた避難計画作りは、避難先を確保したものの、自力で避難できない要支援者の避難や安定ヨウ素剤の配布方法などが決まらず、策定時期が見通せていない。

 高橋市長と一騎打ちとなる見込みの無所属新人で弁護士の谷萩陽一さん(62)は「東京電力福島第一原発事故で原発は危険だと体験したし、市民全員が逃げられる避難計画は作れない」と説き、再稼働反対を明確に打ち出す。

◆駅北口の空洞化

 JR水戸駅北口を背にデッキを進むと、雑草がうっそうと茂る広大な更地が見える。二〇〇九年に閉店した商業施設「リヴィン水戸店」の跡地だ。

 市によると、跡地は二二年にマンションやホテル、商業施設などが入るビルができる予定というが、北口は昨年、丸井水戸店が撤退するなど空洞化が懸念されている。

 駅北口から大工町までの約二キロの国道50号周辺市街地の活性化は、市にとって死活問題だ。そのため、市は一六年から歩行者通行量、居住人口、空き店舗率の達成目標をつくり、観光客を呼び込む水戸城の復元を計画するなど事業を展開してきた。

 担当者は「歩行者通行量や空き店舗率は上向き傾向」と説明するが、居住人口は、子育て世代を中心に移住がなかなか進まず、目標達成は怪しい。

 リヴィン跡地で壁画を描くプロジェクトを進める団体理事の磯崎寛也さん(54)は「街のにぎわいは二十年ぐらい前と比べると、見る影もない。候補者には、若者が活躍できるチャンスを与え、産業を活性化させて街に人を呼び込めるような施策を打ち出してほしい」と期待する。

リヴィン水戸店の跡地。奥がJR水戸駅=水戸市で

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◆市民会館建て替え

 市は、東日本大震災で被災して取り壊した市民会館を、水戸芸術館の隣接地(泉町)に移転させ、建て替えを計画している。地上四階地下一階、延べ二万一千八百平方メートルで、規模は三倍。前回の市長選で、高橋市長は、新市民会館などを建設する四大プロジェクトの実行を掲げて再選し、二〇二二年九月のオープンを目指している。

 市によると、周辺の再開発や備品購入費を含めると事業費は約二百九十五億円となる。このうち国から少なくとも約六十五億円の補助金を受けられるとする。しかし、館周辺に駐車場を建設する計画もあり、さらに事業費が膨らむ恐れがある。

 巨費を投じることを批判し、計画に反対する「市民の会」は一六年に、計画の白紙撤回を求め、住民投票を直接請求した。条例案は市議会で否決されたものの、計画に反対する署名活動を続けている。市民の会の支持を受け立候補した谷萩さんは「このまま進めてはならない」と、白紙に戻す考えを示している。

新市民会館の建設予定地=水戸市で

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