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<投票前に考えた>低投票率 若者たちが変える未来

「まず投票所に行くことが大事」と話す森晃希さん=JR小山駅前で

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 「私たち若い世代は将来の暗い話ばかり聞かされる。投票で未来を変えたいんです」

 県議選告示が間近に迫ったある日、白鴎大(小山市)の学生選挙啓発団体「栃っ子!選挙推進プロジェクト(TEP)」で代表を務める法学部一年、森晃希(こうき)さん(19)は、大学のそばのJR小山駅前で通勤者らに笑顔で投票を呼びかけていた。

 TEPは若者が政治や選挙を考えるきっかけをつくろうと二〇一〇年に発足した。メンバーは十三人。選挙の歴史やシステムを研究し、週一回集まって意見を交わす。

 世代や分野を越えた選挙研究団体との集まりにも参加する。今は上級生が就職活動などで忙しく、新一年生は入学前。森さん一人で投票を呼びかけ、街を駆け巡る日々だ。

 仙台市出身。小学五年のとき、東日本大震災を経験した。自宅が海から離れていたため、直接の被害はなかったが、海辺にあった親類の家は跡形もなく流され「大きなショックを受けた」という。復興が進むのを見守る中で地域行政への関心が膨らんだ。

 高校三年だった一七年十月、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられてから初の衆院選があった。多くの同級生は投票に行ったが、まだ十七歳だった森さんは一票を託せなかった。「残念な気持ちでいっぱいだった。大学に入ったら選挙を学ぼうと決めた」という。

 各種選挙の投票率は右肩下がりとなっている。十八歳選挙権が導入されてから三年近くたったが、若者の投票率は低調だ。県内では一六年の参院選、一七年の衆院選ともに十八、十九歳の投票率が、全世代を通じた投票率を下回った。

 TEPが二月に行った大学生への意識調査で、選挙に行かない理由の多くは「面倒くさい」「たかが一票で変わらない」「興味ない」。国の将来を担う同世代の政治への無関心に、森さんは危機感を募らせた。

 十代の一人として、何ができるかを考える。

 「オーストラリアのように罰金を取る義務投票制を採用すれば投票率は上がるのでは」「政策ごとに意思表明できるシステムがネット社会の今ならできるかも」−。選挙への思い、提言は山ほどある。

 ただ、今はまず、目の前の選挙に参加することの重要性を訴える。「自分の時間を削って投票所に行き、自分なりに考えてベストの候補者の名を書く。それが政治への関心を高める第一歩になると思うから」 (梅村武史)

     ◇

 県議選が告示され、選挙戦となった地域では候補者同士の論戦が続く。人口減など本県が抱える課題は山積みだ。四年に一度、県政を託す人を決める前に、栃木の今をあらためて考えたい。 (随時掲載します)

◆前回県議選 過去最低44.14%

 県選挙管理委員会によると、戦後の県議選の投票率は、1979年に72.20%を記録してから、最低記録を毎回更新し続けている。2011年の前々回に50%を切り、15年の前回は44.14%にとどまった。選挙区別で最も高かったのは矢板市の63.19%、最低は那須塩原市の38.07%。

 

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