紙面から

<リオへ届け 被災地からのエール> サッカー・植田直通へ 故郷への思いを力に

ブラジル入りし、事前合宿で練習する植田(左)=アラカジュで(共同)

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◇地元の先輩・巻誠一郎から

 人目もはばからず涙した。サッカー男子U−23(23歳以下)日本代表でリオデジャネイロ五輪に出場する植田直通(鹿島)。熊本地震直後の湘南戦で勝利した後のヒーローインタビューで、被災した故郷への思いがあふれた。

 「自分の思いを乗せてプレーできる、日本でも少ないタイプの選手」。そう評すのは同じ熊本県出身で元日本代表の巻誠一郎。「(故郷を背負うことを)重たく感じる選手もいると思うけど、彼はそれを力に変えられる」と話す。

 J2熊本でプレーする巻もまた、困難な状況にある地元への思いをプレーに乗せ、ボールを蹴る一人だ。地震でチームは一時的に活動できなくなった。その間、避難所を巡って支援物資を運び、その姿を自らインターネットで伝えた。

 「なんとかできる人が、なんとかするしかない。僕はこういう仕事をしているので、それなりの発信力もある」。その姿に日本中のJリーガーやサポーターらが支援に加わった。「いろんなサッカーファミリーから、何十トン、何百トンという単位で物資が届いた」と巻。サッカーの力、スポーツの力を実感した。

 5月に入るとチームは練習を再開し、リーグにも復帰。7月3日にはホームのうまかな・よかなスタジアムでも試合が行われた。「(チームカラーの)真っ赤に染まった満員のスタジアムでプレーできることが、僕らにとって復興なのかな」。当たり前のように試合がある週末を迎える日へと、歩み始めている。

 植田も地元にいる巻と緊密に連絡を取って物資を送るなど支援し、プレーでも熊本を元気づけてきた。5月に佐賀県鳥栖市でチャリティーマッチとして行われたU−23国際親善試合のガーナ戦。右目付近を切って流血しながら、ピッチに立ち続けた。リオでもきっと、あきらめない姿勢を見せてくれるだろう。

 たくましい地元の後輩とU−23日本代表に、巻は大きな信頼と期待を寄せる。

 「彼らの活躍は避難所の人たちの支えになる。ささいなことでも前向きになれるので、一つでも多く明るい話題を提供してほしい」

 <うえだ・なおみち> 小さいころはテコンドーでも活躍していたという異色の経歴の持ち主。熊本県立大津高から鹿島へ。身長186センチの恵まれた体格を生かし、U−23日本代表ではセンターバックの主力としてリオ五輪出場権獲得に貢献。21歳。

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