紙面から

こぼれる胸中、熱く 五輪戦士ひと言集

 17日間の日程で熱戦が繰り広げられたリオデジャネイロ五輪が閉幕した。世界中のトップアスリートが南米に初めて集い、4年に1度の大舞台で競い合った。勝って喜び、負けて悔しがる。緊張感と重圧から解放されて試合直後に飛び出た言葉は、選手の素直な思いが表れた名言ばかりだ。

重量挙げ女子48キロ級のジャークで107キロに成功し、喜ぶ三宅宏実=リオデジャネイロで(共同)

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◆16年間…バーベルありがとう

 三宅宏実(いちご=重量挙げ女子48キロ級でロンドン大会の銀に続く銅メダル。バーベルにほおずりして)「16年間ともに練習してきたので、バーベルをハグして『ありがとう』と言いたかった」

 太田雄貴(森永製菓=フェンシング男子フルーレ個人の初戦で敗退、現役引退の意向を示した)「最後にずっこけて負けるのも僕らしい」

 羽根田卓也(ミキハウス=カヌーのスラローム男子カナディアンシングルで、同競技日本人初の表彰台となる銅メダル)「日本人がメダルを取るなんて5年前までは誰も信じていなかった。でも僕は、ずっと世界一になりたいと思ってきた」

 水谷隼(ビーコン・ラボ=卓球男子シングルスで3位となり、同競技の個人種目では日本で初めてのメダル獲得)「きょう負けたら一生後悔するし、死にたくなると思うので、絶対に負けたくない気持ちで頑張った。これで卓球界が変わると思う。野球やサッカーのようにメジャースポーツになってほしい」

 棟朝銀河(慶応義塾=トランポリン男子で初出場4位)「五輪は見る方がいい。ディズニーランドのような夢の世界と思って見ていたけど、出てみると一つの試合」

 錦織圭(日清食品=テニス男子シングルスで銅メダルを取り、日本勢で96年ぶりの表彰台に)「最後まで日本のために頑張るというのは心地よいというか、楽しかった」

 松友美佐紀(日本ユニシス=バドミントン女子ダブルスで、同僚の高橋礼華とともに同競技日本勢初の金メダル)「バドミントンの会場で君が代が聴ける日が来るとは思っていなかった」

競泳男子400メートル個人メドレーのレース後、健闘をたたえ合う萩野公介(左)と瀬戸大也=共同

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◆東京こそ1、2位を独占する

 萩野公介(東洋大=競泳男子400メートル個人メドレーで今大会の日本勢の金メダル1号。同学年のライバルの瀬戸大也とそろっての表彰台に)「大也がいなかったら、僕はここにいない。東京五輪でも、また大也と競りたい」

 瀬戸大也(JSS毛呂山=競泳男子400メートル個人メドレー銅メダルで、盟友の萩野とと表彰台に)「自分も東京(五輪)に向けて準備し、次こそ1、2位を独占する」

 松田丈志(セガサミー=競泳男子800メートルリレーでアンカーを務め、52年ぶりの銅メダル)「これで本当の競泳大国と言える」

 星奈津美(ミズノ=競泳女子200メートルバタフライで2大会連続銅メダル)「水泳人生の全てが、ここに詰まっている気がする。人生で最高のレースができた。これ以上、キックも打てないし、手も上がらない」

 福士加代子(ワコール=陸上女子マラソンで14位)「(金メダル)取れなかったあ。きつい、しんどい、きつい、しんどいの連続だった。もうやらない。1歩も走らん」

 山県亮太(セイコーホールディングス=陸上男子100メートルの準決勝でロンドン大会に続いて自己記録を更新して)「あのころの(世界との)差は1歩くらい。今回は良かった。あと半歩くらいです」

◆今までの100メートルで一番短かった

 ケンブリッジ飛鳥(ドーム=陸上男子400メートルリレーでアンカーを務め、初の銀メダルに貢献)「今までの100メートルで一番短かった」

 大野将平(旭化成=柔道男子73キロ級で日本男子に2大会ぶりの金メダルをもたらした)「柔道という競技のすばらしさ、強さ、美しさを伝えられた」

 内村航平(コナミスポーツ=体操男子団体総合で、念願の金メダルを獲得して)「個人で取った(ロンドン)五輪の金とは全然違う。めちゃめちゃ重たい。仲間と取る金メダルは、うれしいを超えちゃっている」

 白井健三(日体大=体操男子団体総合の決勝、優勝の懸かった床運動で高得点を挙げて)「人生で一番心臓に悪い日だったが、間違いなく一番幸せな日になった」

 寺本明日香(レジックスポーツ=体操女子団体総合で主将を務めて4位入賞)「(内村)航平さんの気持ちが分かった。男子と重圧が全然違うけど、主将として団体戦で結果を残したいと思った」

 内村航平(体操男子個人総合で連覇)「この8年間で僕が個人総合のレベルを引き上げた。体操の進化に貢献できている。日本の個人総合が勝てるという歴史をつくってきた。受け継ぐ選手が出てきてほしい」

 伊調馨(ALSOK=レスリング女子58キロ級で、全競技を通じて女子個人種目では史上初の4連覇)「最後は(亡くなった)お母さんが助けてくれたと思います。やっぱりレスリングって難しい。改めて心技体のスポーツだと思った。だからこそやりがいがある」

 吉田沙保里(レスリング女子53キロ級で4連覇を逃して)「取り返しのつかないことになった。(亡くなった)父が助けてくれるかなと、どこかで思ったけど間違いだった」

女子100メートルバタフライ決勝を終え手を振る池江璃花子=代表撮影

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◆東京世代の決意

 リオデジャネイロ五輪で表彰台には届かなかったが、4年後の東京五輪に照準を合わせる若者たちを取り上げた。

 ▽陸上

 ウォルシュ・ジュリアン(19歳。男子400メートルで予選落ち)「4年後また戻ってきたい。経験して次につなげられる」

 ▽競泳

 池江璃花子(りかこ=16歳。女子100メートルバタフライ5位など)「悔しさが大きい五輪だった。2020年にはたくさん種目に出ても(良い)記録を出せる選手になりたい」

 ▽飛び込み

 板橋美波(16歳。女子高飛び込み8位)「初めての五輪で決勝に残れて良かった。安定性を高めることが一番必要。次に生かせるようにしたい」

 ▽体操

 宮川紗江(さえ=16歳。女子団体総合4位)「4年後はパワーアップして大人になるので、下の子たちに落ち着いた演技を見せられる選手になりたい」

バスケ女子準々決勝の米国戦で、シュートを放つ渡嘉敷来夢=共同

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 ▽バドミントン

 山口茜(19歳。女子シングルス準々決勝敗退)「いろんな人の思いを背負って、ここに来た。その人たちの思いをかなえられなかったなと思うと、ちょっと悔しい。強くなりたい」

 ▽柔道

 梅木真美(21歳。女子78キロ級で初戦敗退)「悔しい。結果をしっかり見つめ直して、次につなげていきたい」

 ▽テコンドー

 浜田真由(22歳。女子57キロ級で2回戦敗退)「テコンドーを日本で知ってもらうためには、五輪という舞台(で活躍する)しかない。東京があるので、金メダルを目指して頑張りたい」

  ▽自転車

 長迫吉拓(ながさこ・よしたく=22歳。BMX男子で準々決勝敗退)「本当に悔しい。また東京に向けて始まる。この気持ちを忘れず、新鮮に毎日思い出せるように、何か工夫していきたい」

 ▽ラグビー7人制

 福岡堅樹(けんき=23歳。男子4位)「新しい歴史をつくるのが目標だったので良かった。まだまだ足りないところがあったので次につなげたい」

 ▽バスケットボール

 渡嘉敷来夢(とかしき・らむ=25歳。女子準々決勝で米国に敗れる)「世界でマークされるような選手になりたい。東京五輪でメダルを取って、日本のバスケ界を盛り上げたい」 (共同)

男子200メートルで金メダルを獲得し、スタンドに頭を下げるジャマイカのウサイン・ボルト=佐藤哲紀撮影

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◆9個の金メダル 汗と涙の結晶

 ウサイン・ボルト(ジャマイカ=陸上で3大会連続の3冠を達成)「五輪で全てを成し遂げ、重圧から解き放たれた。今は最後の五輪を終えた少しの寂しさと達成感で複雑な気持ちがある。9個の金メダルは汗と涙の結晶だ。五輪は全てのシーンが特別な思い出に残っている」

 バレント・シンコビッチ(クロアチア=ボート男子ダブルスカルで弟マルティンと組み優勝)「12日後に家に戻るけど、父はまだ酔っぱらっているだろうね」

 クリス・ランリッジ(英国=バドミントン男子ダブルスで銅メダル)「全てが一体になると俺たちは危険なペアになる。パズルみたいだね。時々ピースがなくなるが、ブラジルで見つけられた」

 ジョセフ・クラーク(英国=カヌー・スラローム男子カヤックシングルで金メダル)「僕にとって最高の天気だったね。(雨の多い)英国にいるみたいだから、自分にぴったりだった」

 イザベル・ガルデン(スウェーデン=ハンドボール女子1次リーグで午前9時半開始の試合に競り勝つも)「6時半にトマトソースパスタを詰め込んだのが少しきつかった。朝食として失敗」

 ジャイルズ・スコット(英国=セーリング男子フィン級の優勝候補ながら、初日は10位)「強い風がポン・ジ・アスーカル(砂糖パンと呼ばれるリオの有名な丘)を越え、直接吹き込む悪夢のようなレースだった。命からがら生き残ったよ」

 シャーロット・デュジャディン(英国=馬場馬術個人で2連覇後、婚約者が『そろそろ結婚してくれませんか』と書かれたT−シャツを着て求婚)「みんなの前でプロポーズされたから、絶対彼と結婚しないといけないわね」

 クリスティナ・フォーゲル(ドイツ=自転車女子スプリントで金メダルを獲得し、決勝の2レース目にて)「私はサドルなしで乗っていたの。車体に問題が起き、落ちてしまった。自宅の特別なところにメダルとこのサドルを飾るわ」

 ニック・スケルトン(英国=7度目の五輪、58歳で障害飛越個人を初制覇して馬術史上最年長の金メダリスト)「引退は考えてない。(愛馬)ビッグスター号がやめない限り続けるよ」

 クリスティン・アームストロング(米国=自転車女子個人ロードタイムトライアルで優勝)「(息子の)ルーカスが『どうしてママは泣いているの、勝ったんでしょ?』と聞いてきたの。人は幸福に満たされたときになぜ涙するのか。また一つ彼へのレッスンが増えたわね」

 オビニ・ウエラ(ナウル=柔道男子90キロ級で初戦突破)「柔道を続けるのは本当に大変なんだ。(南太平洋の島国)ナウルには道場が一つしかない。選手は20人だけで、黒帯は5人。唯一の畳は20年物だから、ひどい状態だよ」

 ガウリカ・シン(ネパール=競泳女子100メートル背泳ぎ、大会最年少の13歳)「ここにいることが昨年、震災にあった国の誇りになればうれしい」 (共同)

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