紙面から

<リオへ届け 被災地からのエール> 水球・志水祐介へ 後輩たちの夢のせて

震災直後の苦労を乗り越え、練習に励む子どもたち=熊本市で

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◇中学時代のクラブから

 リオデジャネイロ五輪で、1984年のロサンゼルス五輪以来32年ぶりに日本が代表を送り込む水球男子。主将を務める志水祐介(ブルボンKZ)は中学生時代に熊本ジュニア水球クラブで育った。

 クラブでは、男子は中学生まで、女子は高校生までが練習に励む。熊本地震後はプールが使えず、子どもたちは不安な思いを抱えながら、ボランティアなどで復興の手伝いをしていた。

 男子中学生の主将を務める野口颯汰君(14)は「練習をしたかったし、みんなに会いたかった」と当時の気持ちを話す。チームメートの花園賢信君(14)は「水球はできないけど、使える競泳用のプールで泳いでいた」。1カ月ほどして練習を再開。指導する工藤龍之介監督(26)は「みんなで集まった時は、楽しそうにしていた」と振り返る。

 夏の大会に向け、練習の遅れを取り戻そうとしていた6月下旬、志水が熊本のプールへ指導に来てくれた。「あこがれていた先輩が来てくれて、ほっとした。日常が戻った感じ」と野口君。地震から2カ月ちょっと。普通は経験しない困難な状況ばかりに直面した子どもたちにとって、地元のヒーローが五輪を控えた時期に一緒にプールに入ってくれたことは、大きな心の支えになった。

 地震直後も遠征から帰国した際に熊本を訪れ、代表選手のサインが入ったシャツを贈るなど子どもたちを常に元気づけてきた志水。「リオではまずベスト8。東京五輪でメダル獲得」という目標を、地元の関係者らに宣言した。

 屋内温水プールの利用の見通しが立たず、クラブはこの冬の練習場所を確保することもままならない。そんな状況で、日本を代表する選手が東京五輪までを見据えて世界に挑んでいるのは心強い。工藤監督は「オリンピック選手が身近にいて、熊本に来る。子どもたちはリオの話を聞いて自分たちにも夢があると思っている」と目を細める。

 花園君は「ベスト8を達成して、熊本を元気づけてもらいたい」とエールを送る。野口君は「日本では野球やサッカーが有名。リオで活躍して、同じように有名になってくれれば」。2020年の東京五輪、そしてその先も水球界を担う子どもたちが、リオで戦う偉大な先輩の雄姿に熱いまなざしを向ける。

 <しみず・ゆうすけ> 熊本ジュニア水球クラブから、埼玉栄高、筑波大へ進学。2008年に日本代表としてデビューし、チームの中心として戦ってきた。近年は海外のリーグにも挑戦。「ポセイドンジャパン」の頼れる主将。27歳。

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