紙面から

聖火トーチに日系魂 ホーミー・ハヤシさんデザイン

聖火リレーのトーチをデザインしたホーミー・ハヤシさん=サンパウロで

写真

 広大なブラジル全土を三カ月かけて巡った聖火リレーも大詰めを迎え、四日は選手村でスタートした。リレー走者が手にするトーチ(たいまつ)を設計したのは、ブラジル・サンパウロに住む日系人デザイナー、ホーミー・ハヤシさん(47)だ。国内の五輪人気は芳しいとはいえず、リレーでは妨害活動も起きているが「聖火台に火が届けば街中が、熱気で燃え上がるはず」と信じる。 (サンパウロで、中野祐紀、写真も)

 ハヤシさんは、第一次世界大戦後に日本からブラジルに渡って写真家になった祖父、仕立屋の祖母を持つ三世で、母はドイツ人。「まじめで物事を規則正しく進める二つの国の血を引いたからきっと、工業デザインが得意なのね」。同じくデザイナーの夫と共同経営の事務所で、香水の瓶や台所用のガスオーブン、医療機器までさまざまな製品を設計してきた。トーチのデザインは、部屋中の壁にリオの街中やアマゾンの風景、アスリートの写真を数十枚張ってイメージを膨らませ、事務所の仲間と八週間かけて完成させた。

 白い筒形のトーチは、先端に点火すると縦に伸びる仕組み。その際にできる五つのすき間は、コパカバーナ海岸の波や、キリスト像で知られるコルコバードの丘などリオの山並みを表しているという。

 伸びる機能を盛り込んだのは、ブラジルが発展する可能性を示したかったから。「手の込んだカラクリを仕込みたくなるのは、おばあちゃんに教わった折り紙の影響かも」と笑った。

 トーチの旅は五日夜(日本時間六日朝)、マラカナン競技場での開会式で、最終ランナーが聖火台に火をともして終わる。デザイナーとはいえ、最終ランナーの名は教えてもらっていない。「偉大なサッカー選手のペレか、ジーコかしら。いずれにしろ、ブラジル人みんなを納得させるスターが最高の舞台をつくってくれるわ」。待ち遠しいその時はすぐにやってくる。

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