紙面から

旗手の右代 十種競技に光を

 【リオデジャネイロ=本社五輪取材団】四年に一度のスポーツの祭典が本格的に幕を開けた。南米初開催の五輪となるリオデジャネイロ五輪は五日、当地のマラカナン競技場で開会式を行い、四年後の東京五輪を見据える日本選手団は陸上男子十種競技の右代(うしろ)啓祐(スズキ浜松AC)を旗手に入場行進した。特別参加する「難民五輪選手団」もひときわ大きな拍手を浴びながら入場し、平和の祭典でもある五輪を世界にアピールした。

 日の丸を掲げる太い腕。鍛え上げた一九六センチの巨体が日本選手団の先頭を行く。「非常に光栄に思う」。旗手の陸上男子十種競技、右代啓祐の胸に万感の思いが充満した。

 主将、旗手の人選は難航した。競技に集中したい選手にとって、本番への影響も心配してしまう大役。白羽の矢を立てられた右代だが、自身の競技は開会式の十二日後。大会後半にある陸上からの開会式参加は一人だけだ。

 周囲の不安をよそに、十種競技の伝道者を自任する右代は「素晴らしい仕事。任せてもらったことがすごくうれしい」と語る。二〇一二年ロンドン五輪に日本勢として四十八年ぶりに出場し、一四年仁川アジア大会では二十四年ぶりに金メダルを獲得。今大会は背中を追ってきた中村明彦(スズキ浜松AC)とともに、八十八年ぶりに二人で五輪に乗り込んできた。

 眠りについていた種目に光を当てた立役者にとって、旗手任命は努力の証し。六月上旬に左手を骨折しており、余裕があるわけではない。それでも「ここ数年、十種競技を耳にすることが増えたと思う。いい流れが来ている。すごく魅力がある種目なので、たくさんの人に知ってもらいたい」と言葉に力がこもる。

 「うしろ」と読む珍しい姓とともに、十種競技の存在を多くの人の脳裏に刻み込んだ開会式。「ロンドン五輪が終わってからの四年間で、しっかりと積んできた部分もある。自己記録の更新によって八位入賞、さらには上も狙うことができると思う」と気持ちも十分に高まっている。 (高橋隆太郎)

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