紙面から

萩野「金」 瀬戸「銅」 最強の敵で最大の友「一人じゃない」

3位の瀬戸大也(右)と健闘をたたえ合う、男子400メートル個人メドレーで優勝した萩野公介=6日、リオデジャネイロで(隈崎稔樹撮影)

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◆400個人メドレー 60年ぶり日本人2人表彰台

 【リオデジャネイロ=本社五輪取材団】リオデジャネイロ五輪第二日の六日夜(日本時間七日朝)、競泳男子400メートル個人メドレー決勝で萩野公介(21)=東洋大、栃木県・作新学院高出身=が4分6秒05の日本新で優勝し、日本勢では今大会金メダル第一号に輝いた。競泳男子の金メダルは二大会ぶりで個人メドレーでは史上初の快挙。また早大四年の瀬戸大也(だいや)(22)=JSS毛呂山、埼玉県・埼玉栄高出身=は4分9秒71で銅メダルを獲得した。

 柔道は女子48キロ級の近藤亜美(21)=三井住友海上=が三位決定戦を制し、今大会日本勢初のメダルを獲得した。男子60キロ級の高藤直寿(なおひさ)(23)=パーク24、神奈川県・東海大相模高出身=も銅メダル。重量挙げ女子48キロ級の三宅宏実(30)=いちご、埼玉県・埼玉栄高出身=は銅メダルを手にした。

 ゴールにタッチした瞬間、萩野は思った。「一人じゃないんだ」。男子400メートル個人メドレーで日本勢初の金メダル。関わった多くの人の顔が浮かぶ。その中には二コース隣の同学年、銅メダルの瀬戸がいた。「大也がいなかったら、僕はここにいない」。六十年ぶりに日本人二人が上った表彰台で、最強の敵であり、最大の友と抱き合った。

 昨年六月末、萩野は右肘を骨折。八月の世界選手権(ロシア・カザニ)を欠場した。そこで瀬戸が二連覇を飾ったレースを日本にいた萩野はテレビで見ることができなかったという。

 「ライバルは自分」とベストタイムとだけ闘ってきた孤高の天才は、小学校時代は圧倒していた瀬戸に中学で初めて敗れた。じわりじわりと近づいてくる存在に戸惑い、恐れ、向き合うことを拒み続けた。

 一方、子どものころから背中を追い掛けてきた萩野と泳ぐ時、瀬戸は決まって「公介に負けたくない」と言う。勝ちたい相手を意識し、そのための泳ぎに徹する。ライバルの存在は勝利への原動力となった。お互い、倒さなければ世界一にはなれない。萩野はようやく、真正面からライバルと対峙(たいじ)する覚悟を固めた。

 四月の日本選手権、そして三連敗中だった五月のジャパン・オープンで瀬戸に勝利。勝負へのこだわりを強め、五輪本番も完勝で金メダルをつかみ取った。

 二位のチェース・ケイリシュ(米国)を含めて表彰台に上がった三人は、くしくも同じ一九九四年生まれ。四年後は円熟期を迎える。萩野は「東京五輪でも、また大也と競りたい。もっともっと強くなって、いいレースをしたい」と目を輝かせる。次は東京で新たな物語を作り出す。 (リオデジャネイロ・高橋隆太郎)

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