紙面から

五重奏、最高峰に 体操団体「金」 迷い断ち内村を支えた 

男子団体総合で優勝し、表彰式で観客席に手を振る(左から)山室光史、内村航平、田中佑典、白井健三、加藤凌平=リオデジャネイロで(内山田正夫撮影)

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 男子団体総合決勝が行われ、予選4位の日本は合計274・094点で優勝し、2004年アテネ五輪以来3大会ぶり7度目の金メダルを獲得した。ロシアが271・453点で2位に入り、3位だった00年シドニー五輪以来の表彰台となった。予選1位の中国は271・122点の3位。

 日本は1種目目のあん馬で山室光史(コナミスポーツ)が落下し、苦しいスタートとなった。しかし、最年少19歳の白井健三(日体大)が跳馬と床運動で高得点。唯一全6種目に出場したエース内村航平(コナミスポーツ)や、5種目出場の加藤凌平(コナミスポーツ)も安定した演技でチームを引っ張った。先行したロシアは終盤2種目で得点が伸び悩み、3連覇を狙った中国もミスが目立ち、最終的には大差がついた。 (共同)

 アテネ五輪のように美しい勝ち方ではなかった。成功と失敗を重ねながらも少しずつ希望を押し広げ、最後は堂々と力の差を見せつける勝利。「予選1位じゃなくても日本の体操はしっかり評価される。金を取れるチームと証明できた」と内村。6種目をこなしたエースを周りがしっかり支えた逆転劇は、12年前と違う強さを示すものだった。

 1種目目のあん馬で山室が落下。予選4位通過で心理的にも劣勢にある中、いきなり大過失が出た。つり輪の点も伸びず、2種目を終えて5位。今回も金メダルは遠ざかったかと思われた。

 水鳥寿思監督が「ターニングポイントだった」と振り返ったのは4種目目の平行棒。予選では2人がミスをして流れを手放した種目だ。1番手は、その苦みを抱える一人である田中。Dスコア(演技価値点)を落として無難に通す選択肢もあったが、ロンドン五輪の敗北の悔しさを知る26歳は「ここに何しに来たのか」と迷いを断ち切った。

 「平常心でやれるわけがない。でも、練習通りやるしかない」。予選で失敗した倒立技をこらえ、15・900点の高得点。加藤、内村も15点台中盤の得点で続くと一気に上げ潮ムードとなり、次の鉄棒で首位に立った時点で日本の輝く運命は決まった。

 あん馬から始まるローテーションは、床運動に最も体力と神経を使う内村にとって厳しいものだった。予選の疲れを引きずって平行棒や鉄棒で力を出し切れなかったエースを、国際大会でミスの印象が強かった田中だけでなく、加藤の安定感と白井の爆発力が救った。山室もつり輪だけでなく、内村と並ぶ最年長者として精神的に支えた。

 歓喜の表彰式。5人は、遠くからでも分かるほど大きな口を開けて君が代を歌った。度重なる悔しさを糧に、4年間で磨いてきた力と技がこの日、絶妙のハーモニーを奏でた。 (鈴木智行)

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