紙面から

柔道・大野「金」 一分の隙も見せず完勝

男子73キロ級決勝で、アゼルバイジャンのルスタム・オルジョイ(下)を破り優勝した大野将平=佐藤雄太朗撮影

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 2階級が行われ、男子73キロ級で2015年世界選手権王者の大野将平(旭化成)は決勝でオルジョイ(アゼルバイジャン)に小内刈りで一本勝ちし、柔道勢最初の金メダルを獲得した。

 女子57キロ級で前回ロンドン大会金メダルの松本薫(ベネシード)は3位決定戦で連珍羚(台湾)に優勢勝ちし、銅メダル。地元ブラジルのシルバが優勝し、今大会で同国最初の金メダルを手にした。 (共同)

 日本男子に2大会ぶりの金メダルをもたらした瞬間、73キロ級の大野は静かにたたずんだ。歓喜の客席とは対照的に、ガッツポーズも雄たけびもない。「フー」と大きく息を吐き、長く、深い礼。「相手を敬おうと思って。日本の心を見せられる場でもあるので。よく気持ちを抑えられたと思う」。畳を下りるとはじかれたように笑った。

 世界王者は危うさも、一分の隙もなかった。決勝で序盤から相手に圧力をかけ続けて技ありを奪い、3分すぎに決着をつけた。得意の内股を強く意識させ、相手が防御のために重心をかけた右足を狙って小内刈り。上体を巻き込んで仕留め、一本を奪った。

 得意技は最大限に警戒されていたが、この日はお構いなしに投げ、倒した。3回戦は内股で一本勝ち。準決勝はともえ投げで2度投げ飛ばして合わせ技一本。いつも通り表情を変えず、いつも通り圧倒的にねじ伏せた。

 「ことしはそれを目標に掲げて、その稽古を積み重ねてきた自信はあった。あとはそれをオリンピックの場で出すだけだった」

 これまでの実績と内容から「金メダル最有力」と目された。日本男子はここまで銅メダル二つ。幾重ものプレッシャーをはねのけ、「いつも通り冷静かつ大胆にやれたこと。集中、執念、我慢」と勝因を語った。

 日本男子が金メダルなしに終わったロンドン五輪を現地で観戦した。自らの手で雪辱を果たすため「これからの4年間で心技体の全てで外国選手を上回る」と決意。「自分を超越させること」をテーマに掲げた。

 稽古では自分より大きく、重い相手との乱取りを好む。7月の国際合宿では怪力で鳴る90キロ級の元世界王者イリアディス(ギリシャ)と組み合い、「力負けしなかった」。五輪前、あえて「優勝候補」と大野を名指しし、ハッパを掛けた日本男子の井上康生監督は「高いレベルの総合力を持った選手。心から敬意を表したい」とたたえた。

 「平成の大将」が名前の由来。「世界を驚かせる柔道をする」と乗り込んだリオで、その名を歴史に刻んだ。 (井上仁)

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