紙面から

カヌー・羽根田 世界の波とらえた 海外修業10年「やっと」

男子スラローム・カナディアンシングル決勝3位となり、カヌー競技で日本人初のメダルを獲得した羽根田卓也=共同

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 スラロームの男子カナディアンシングル決勝が行われ、羽根田卓也(ミキハウス)が97・44点で3位に入り、銅メダルを獲得した。カヌー競技で日本人初のメダル。ガルガウシャヌ(フランス)が94・17点で優勝した。 (共同)

 感情を抑えられなかった。3度目の五輪で夢をかなえた羽根田は、結果を知らせる電光掲示板の表示を見届けると、あふれ出る涙を受け止めるように両手で顔を覆った。欧州勢が席巻してきた表彰台に割って入る歴史的快挙。「この競技で日本人がメダルを取るなんて、5年前までは誰も信じていなかった。アジア人初のメダルは誇りに思う」。夢見心地の中でも言葉は熱を帯びた。

 準決勝はトップと3・21点差の6位。10選手中5番手でスタートを切ると、メダルを目指して序盤から攻めた。大小の波をものともせず一気にスピードに乗る。中盤まで順調に艇を進め、やや落差のある難所へ。流れに動きを制限され体勢を崩しても慌てない。疲労を感じさせない巧みさでパドルを操り、停滞をわずかにとどめた。

 準決勝に続いて24あるゲートに一度も触れることなく暫定2位でゴール。続いて登場した準決勝上位5人が次々とゲートを揺らして崩れていったのと対照的だった。

 躍進を支えた正確なパドルさばきは、カヌーの本場で身に付けた。高校卒業後の2006年に単身でスロバキアへ。国際大会で使われる人工コースがない日本を離れ、武者修行の道を選んだ。

 北京五輪は予選敗退。ロンドンも7位にとどまったが、レベルの高い欧州に身を置いた決断がついに実を結んだ。「スロバキアに渡って10年。やっと努力が報われた」。今やすっかり顔なじみになった欧州のライバルたちに肩を抱かれて祝福され、日に焼けた顔をほころばせた。 (中野祐紀)

 <カヌー> 急流に設置されたゲートをくぐり抜けながらタイムと得点を競うスラロームと、流れのない穏やかな水上で一斉にスタートし、直線コースで順位を競うスプリントがある。片側に水かきのあるパドルでこぐカナディアンと両端に水かきのついたパドルでこぐカヤックがある。スラロームはゲート番号順に通過しなければならず、ゲートに触れた場合は2秒、通過できない場合は50秒のペナルティーが科せられ、ゴールタイムに加算される。

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