柔道男子８１キロ級・永瀬、扉開く銅

　２階級が行われ、男子８１キロ級で２０１５年世界選手権王者の永瀬貴規（旭化成）は３位決定戦でチリキシビリ（ジョージア）に優勢勝ちし、銅メダルを獲得した。同階級の日本勢のメダル獲得は、００年シドニー五輪金メダルの滝本誠以来となった。ハルムルザエフ（ロシア）が優勝した。

　女子６３キロ級で１５年世界選手権３位の田代未来（コマツ）は３位決定戦でジェルビ（イスラエル）に優勢で敗れ、５位となり、今大会の日本柔道陣で初めてメダルを逃した。トルステニャク（スロベニア）が金メダルを獲得した。　（共同）

　本来の動きに戻った永瀬は、やはり強かった。敗者復活戦は足技の連続から背負い落としで一本勝ち。３位決定戦は世界ランク１位の猛攻を難なくしのぎ、内股で有効を奪って優勢勝ちした。

　日本男子の井上康生監督は「最後の２試合を見れば十、分に優勝する力がある」とあらためて感じた。だが、現実は銅メダル。永瀬は「悔しい気持ちでいっぱいだけど、負けてから２戦は本来の動きができて良かった」と、自分に言い聞かせるように語った。

　準々決勝までは別人のようだった。相手の動きに合わせて自分からリズムをつくらず、手数が出ない。最近では数少なかった、永瀬が負ける時の典型的なパターンだ。本人もコーチ陣も十分承知していたはずの悪癖が、肝心の場面で出た。永瀬は「ちょっと臆病になって縮こまった。勝ちたい気持ちが安全策になってしまった」と悔やむ。

　井上監督の見立てでは「本来の力の５０パーセントも出せていなかった」。そして、その理由を内面に求める。「技術も体力も十分に圧倒できる強さがある。されど、五輪はまた別な力、要素が必要」

　男子８１キロ級は世界的に層が厚く、長らく日本の泣きどころとされたが、昨年の世界選手権を初制覇した永瀬がその歴史に終止符を打った。世界大会で日本勢の金メダルは、２０００年シドニー五輪の滝本誠以来だった。

　永瀬は「歴史どうこうより、自分が金メダルを取りたかった」と笑顔はないが、銅メダルでも日本柔道にとって大きな一歩。まだ２２歳。借りは４年後の東京五輪で返すつもりだ。　（リオデジャネイロ・井上仁）