紙面から

体操・加藤11位 悔しさばねに

鉄棒で落下し、手を見つめる加藤凌平=佐藤哲紀撮影

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 鉄のような精神がついに崩れた。予選の全6種目と団体総合決勝の5種目で大きなミスを犯さず、この日も上位に食らい付いた加藤。最後の鉄棒でG難度の「カッシーナ」などの手放し技を成功させながら、最後の「ヤマワキ」でマットに落ち、メダルどころか入賞も逃した。

 「気持ちで途切れる面があった。何が起こるか分からない、と思えないほど周りのレベルが高かった」。五輪で初めて挑んだ個人総合の戦いは苦いものになった。

 クールな表情に4年間の苦悩を押し隠す。初出場したロンドン五輪の翌年、2013年世界選手権で銀メダル。内村とのワンツーフィニッシュを飾り「いったん、そこで満足してしまった。個人総合に対する気持ちも薄れた」。一時は、代表に呼ばれても「少し休みたい」と感じるほど心の盛り上がりを欠いた。

 14年の世界選手権は個人総合で決勝に残れずじまい。内村と田中佑典(コナミスポーツ)が表彰台に上がるのを観客席で見つめ「来年は」と奮起した。15年の世界選手権は左足首をねんざした影響で出場種目が限られた。それだけに結果を出したかった舞台。同い年のベルニャエフの躍進も悔しさを倍増させた。

 「団体戦は15点台をそろえる確実性が求められるが、個人総合は16点台、15点台後半と爆発する種目も必要。団体にかけすぎていたので取り残された感がある」。団体で目標を果たしたいまは「自分だけに集中しないと」。同じ所属の世界王者を追う一番手は譲らない。 (鈴木智行)

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