紙面から

女子200バタ・星、涙の銅

女子200メートルバタフライ決勝銅メダルを獲得し、声援に応える星奈津美=リオデジャネイロで(今泉慶太撮影)

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 女子200メートルバタフライ決勝で星奈津美(ミズノ)が2分5秒20で2大会連続の銅メダルを獲得した。ミレイア・ベルモンテガルシア(スペイン)が2分4秒85で優勝した。男子200メートル平泳ぎ決勝は小関也朱篤(ミキハウス)が2分7秒80の5位、渡辺一平(早大)が2分7秒87の6位。ドミトリー・バランディン(カザフスタン)が2分7秒46で勝った。

 女子800メートルリレー決勝の日本(五十嵐、持田、青木、池江)は7分56秒76の8位だった。予選で第1泳者の五十嵐千尋(日体大)が1分57秒18の200メートル自由形日本新記録を出した。

 男子200メートル個人メドレー準決勝は、400メートルとの2冠を狙う萩野公介(東洋大)が1分57秒38の全体4位、藤森太将(ミキハウス)が1分58秒20の7位で決勝に進出した。女子200メートル平泳ぎ準決勝の金藤理絵(Jaked)は2分22秒11の2位で勝ち上がったが、昨年の世界選手権を制した渡部香生子(JSS立石)は2分25秒10の13位で敗れた。

 男子200メートル背泳ぎ準決勝の入江陵介(イトマン東進)は1分56秒31の7位で決勝進出。金子雅紀(YURAS)は1分56秒78の11位で敗退した。女子100メートル自由形準決勝で、16歳の池江璃花子(ルネサンス亀戸)は54秒31の12位、内田美希(東洋大)は54秒39の14位で決勝進出を逃した。 (共同)

◆苦しみ抜いた世界女王「人生で最高のレース」

 涙があふれるのは力を残さず出し切れたから。「水泳人生の全てが、ここに詰まっている気がする。人生で最高のレースができた」。星は2大会連続で手にした銅メダルをいとおしそうに見つめた。

 女子200メートルバタフライ決勝。マークしていたのは優勝したベルモンテガルシア。「置いていかれないように」。爆発的な速さはないが、ペースを極力保ち、最後まで粘り切る。らしい泳ぎで3位を死守し、ラスト50メートルは「全て出し切った。これ以上、キックも打てないし、手も上がらない」というほど熱を込め、ゴールにタッチした。

 苦しみ抜いた1年だった。昨夏の世界選手権で金メダルを獲得。早々にリオ五輪代表に内定したことで「モチベーションを保つのが難しかった」。4年前に出した日本記録、2分4秒69を目指してトレーニングを積むが、タイムが上がらない。4月の日本選手権でも2分6秒台と納得のいくものではなかった。

 不安な気持ちは、五輪本番へ向けた6月の海外遠征中に頂点に達した。窮地を救ったのは恩師の言葉。部屋で泣いていた星を、平井伯昌コーチは食事に連れ出し、語りかけた。「世界王者のプライドなんか持たなくていい。君が諦めないなら、とことん付き合うよ」

 この日の決勝も「結果にこだわらず力を出し切ってこい」と送り出され、指示通りに最後の一滴まで絞り出した。2分5秒20はロンドン五輪以降のベストタイム。金メダル、そして2分4秒台には届かなかった。それでも「やり切った。銅メダルに対して、すごく納得できた」と涙が乾いた頬を緩ませる。

 日本女子の五輪2大会連続のメダル獲得は前畑秀子、中村礼子に続き3人目。同じ銅メダルだが「今回の方が重い」と星は言う。年を重ね、世界女王にもなり、4年前には無縁だったさまざまな重圧を背負った。その分、増した喜び。「ここまで続けてくることができて良かった」。いつものように穏やかに笑った。 (リオデジャネイロ・高橋隆太郎)

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