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体操・内村、不動の個人総合連覇

男子個人総合決勝 最終種目の鉄棒で顔をゆがめて着地する内村航平=10日、リオデジャネイロで(内山田正夫撮影)

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 【リオデジャネイロ=本社五輪取材団】リオデジャネイロ五輪は第6日の10日夜(日本時間11日朝)、体操の男子個人総合で内村航平(コナミスポーツ)が2連覇を飾り、団体総合に続く今大会2個目の金メダルに輝いた。柔道では男子90キロ級のベイカー茉秋(ましゅう=東海大、東京都出身)と女子70キロ級の田知本遥(たちもと・はるか=ALSOK)がそろって頂点に。金メダルラッシュとなった。

 競泳は女子200メートルバタフライの星奈津美(ミズノ、埼玉県出身)が2大会連続の銅メダルを獲得。卓球の女子シングルスで福原愛(ANA)は3位決定戦で北朝鮮選手に敗れ、メダルを逃した。サッカー男子は日本がスウェーデンを1−0で下したが、1次リーグ敗退が決まった。ラグビー7人制男子の日本は準々決勝でフランスを12−7で破り、フィジーとの準決勝に進んだ。

◆痛みに耐え最終鉄棒で逆転

 【リオデジャネイロ=鈴木智行】リオデジャネイロ五輪は第六日の十日夜(日本時間十一日朝)、体操男子個人総合で内村航平(27)=コナミスポーツ=が最終種目の鉄棒で逆転し、二連覇を達成した。団体総合との二冠に輝き、個人の連覇は一九六八年メキシコ、七二年ミュンヘン大会の加藤沢男以来四十四年ぶり四人目。

 窮地だからこそ自分を信じた。「何も欲を出さず、いつも通りやって着地をすることだけ考えていた」。希望が薄れかけた連覇のことも頭から消し去り、内村は静かに最終種目となる鉄棒を握った。

 首位のオレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)とは0・901点差。演技の難度を急きょ上げる手もあったが、ロンドン大会の王者は「これで勝負すると練習から決めていた」。予選と、優勝した団体総合決勝でともにミスが出た演技構成をやりきることに集中した。

 G難度の手放し技「カッシーナ」。持ち直そうとする鉄棒に顔がやや近づいた。ひじを曲げてつかめば減点される。タイミングを巧みに合わせ、腕を伸ばして握った。「自然の力で放り出て、近くなったら修正して」

 四日前と二日前に全六種目をこなした肉体は、限界に近づいていた。終盤、腰に痛みが走った。「北京五輪のころから爆弾を抱える」(森泉貴博コーチ)部位が悲鳴を上げたが、心は乱れない。最後は伸身の新月面。両足をそろえてマットに降りると、一瞬の静寂の後、地鳴りのような歓声が起きた。

 決勝出場者で最高の15・800点。「これで負けても悔いはない」。最終演技者となったベルニャエフはぎこちない演技で着地も大きく動いた。電光掲示板で二人の名前が入れ替わった瞬間、王者は全身の筋肉を震わせてガッツポーズ。わずか0・099点差。「よかった。ただただ、よかった」

 平常心はこの五輪の最大のテーマ。ロンドンでは高難度技を詰め込んだためミスが目立ち、優勝しても納得していなかった。「体操はやっぱり美しくないといけない。世界選手権を六連覇した選手は自分だけ。感じたものは周りに発信していかないと」。先導者として、四年間を凝縮した演技だった。

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