紙面から

柔道男子100キロ級・羽賀、執念の「銅」

男子100キロ級3位決定戦ウクライナ選手(下)を破り、銅メダルを獲得した羽賀龍之介=内山田正夫撮影

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 2階級が行われ、男子100キロ級で2015年世界選手権王者の羽賀龍之介(旭化成)は3位決定戦でブロシェンコ(ウクライナ)に三角絞めで一本勝ちし、銅メダルを獲得した。羽賀を準々決勝で破ったクルパレク(チェコ)が優勝した。

 日本柔道のメダルは10個となり、1992年バルセロナ、04年アテネ両五輪の最多記録に並んだ。男子が獲得したメダル6個は過去最多。梅木真美(環太平洋大)が2回戦で敗退した女子78キロ級はハリソン(米国)が2連覇した。 (共同)

 男子100キロ級の準々決勝。羽賀は2年前の世界王者にほぼ完封され、指導差で屈した。その瞬間、気が抜けたようになってしまった。「金メダルだけを目指し、それが取れなくなり、自分を駆り立てていたものがなくなった」

 約2時間の休憩を挟んだ敗者復活戦の畳に上がっても、焦点は定まらない。だが、組み合った瞬間に闘争本能がよみがえった。

 「銅メダルよりも、この選手に負けたくないと思った」。客席からブーイングを浴びながら、泥くさく指導差で勝利をもぎ取った。3位決定戦は足技の連続で崩し、得意の三角絞めで一本勝ち。この階級では2000年シドニー以来の五輪メダルにも、「できることをやろうと思った。それが今回、唯一良かったところかな」と悔しさを押し殺すように語った。

 昨夏の世界選手権と昨年末のグランドスラム東京は、ほぼ得意の左内股だけでライバルたちを畳に沈めた。この日は初戦こそ内股で一本勝ちしたが、その後は耐えられ、すかされ、次第に技が出なくなった。警戒が厳重だったこともあるが、有利な間合いでも踏み込めず、「(技を)かけた後にどうなるかを考えて、怖さが出てしまった」と唇をかんだ。

 ロンドン五輪後に男子代表が現体制になった際、井上康生監督は重量級の再建をテーマに掲げた。特に100キロ級は誰が国際大会に出ても成績が振るわず、ついには14年の世界選手権は100キロ級だけ選手が派遣されない事態に。「あれ以上の悔しさはなかった」と屈辱の底からはい上がった舞台だった。

 3位決定戦を終えて畳を下りると、迎えた鈴木桂治コーチに肩を抱かれ、「次に生かそう」と励まされた。うなずいた羽賀だったが、「五輪銅メダルで、次に生かそうなんて気持ちを持っちゃいけないと思うけど、まだ次があると自分に言い聞かせたい」。くしゃくしゃの泣き笑いで花道を引き揚げた。 (井上仁)

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