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体操・寺本、52年ぶり入賞 苦闘4年、乗り越え集大成

女子個人総合決勝寺本明日香の跳馬=隈崎稔樹撮影

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 女子個人総合決勝が行われ、寺本明日香(中京大、レジックスポーツ)は57・965点で8位に入り、日本勢では1964年東京五輪で6位の池田敬子以来52年ぶりの入賞を果たした。持ち味の安定感に加え、跳馬で全体6位の15・100点をマークするなど予選12位から順位を上げた。

 世界選手権3連覇中のバイルスが62・198点で2位に2・100の大差をつけて初優勝し、団体総合と2冠。米国勢として4連覇を果たした。

 レイズマン(米国)が銀、ムスタフィナ(ロシア)が銅メダルを獲得。予選9位の村上茉愛(日体大)は得意の床運動で着地が乱れるなど56・665点の14位。 (共同)

 この五輪で最後の一本。大舞台で体操を披露するのも、人生最後になるかもしれない。一つの集大成としてリオに臨んだ寺本の胸に、封印しようとした感情が忍び寄る。「ふくらはぎがけいれんして、やばいと思うほど緊張した」。それでも、ずっと目標にしてきた入賞に向けて跳馬の助走を始めた。

 3種目を終えて14位。最終種目でDスコア(演技価値点)6・2点の「チュソビチナ」に挑んだ。「心を無にして行った」。前向きに手を着き、前方伸身宙返りをしながら1回半ひねり。体を弾ませずに着地を止めた。15・100点で総得点を押し上げ、8位に上昇。ロンドン五輪11位、世界選手権で2度の9位と届きそうで届かなかった入賞圏についに飛び込んだ。

 この4年の道のりは跳馬に象徴される。2012年9月、練習中にこの種目の助走で左手を骨折。16歳で出場したロンドン五輪まで得意にしていた伸身ユルチェンコ2回ひねりが跳べなくなった。その後も、新しい技を習得しかけるたびにけがで停滞した。

 「若くてイケイケだった」高校2年生は大学生になり、20歳に。小さい体で無理をしながら痛い目に遭い続けた少女は、若者らしくない「熟練」という言葉をしばしば口にするようになった。この決勝は「練習でできた技より、少しレベルを下げるくらいがいい」と大人の選択で臨み、段違い平行棒から3種目をノーミス。跳馬は、昨年ようやく習得した新たな武器で締めくくった。

 「ロンドンとまた違う楽しさがあり、感動できた。五輪で自分の実力を出せた。それだけでもすごい」。日本勢52年ぶりの入賞という快挙以上に、その事実が心を満たした。 (鈴木智行)

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