紙面から

水谷「銅」卓球単で日本初のメダル

卓球男子シングルスで日本人初となる銅メダルを決め喜ぶ水谷隼=11日、リオデジャネイロで(共同)

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 卓球の男子シングルスが行われ、準決勝で敗れた第4シードの水谷隼(ビーコン・ラボ)が3位決定戦で6大会連続出場の40歳、サムソノフ(ベラルーシ)を4−1で下し、銅メダルを獲得した。卓球で日本男子、個人種目のメダルは初めて。2ゲームを連取した水谷は第3ゲームを落としたが、第4、第5ゲームを奪って粘る相手を振り切った。決勝は中国勢対決となり、昨年の世界選手権王者で第1シードの馬龍が五輪2連覇を狙った第2シードの張継科に4−0でストレート勝ちし、金メダルに輝いた。3大会連続出場の水谷は同日の準決勝で馬龍に2−4で屈した。 (共同)

◆エースの意地「男子だって」

 勝利が決まると、コートに倒れ込んで力いっぱいほえた。卓球男子シングルスの三位決定戦で銅メダルを獲得した水谷選手(静岡県出身)。十年以上感じ続けてきたもどかしさから、解放された瞬間だった。

 国内で世間から脚光を浴びるのは福原愛選手(27)、石川佳純選手(23)ら女子ばかり。男子の方が速くてパワフル、ラリーは見応えがある。一度見てもらえれば、卓球の魅力を伝えられる自信はあるのに…。

 二〇一二年ロンドン五輪で男子はメダルを逃した。帰国した成田空港での記者会見はほんの数分で終わった。当時、男子のコーチを務めていた倉嶋洋介監督(40)は「男子の会見はお通夜みたいな感じ。全く質問も出ない。みんな泣きそうだった」と振り返る。

 団体でメダルを獲得した女子の華やかな会見の横を通り抜け、悔しさにまみれ、帰路に就いた。ここで水谷選手は決意を新たにする。「自分が現役のうちに責任を持って男子初のメダルを取らなくてはいけない」。注目度の高い五輪でのメダルがどうしても必要だった。

 三度目の五輪へ向け、この四年は自らに投資した。中国人でドイツ名門クラブの邱建新コーチと自費で契約し、レベルアップを図った。「わらにもすがる思い。費用はいくらでもいい。貯金を全部出してもいいからお願いしたかった」

 準決勝は世界ランキング一位の馬龍選手(中国)との激しいラリーでリオデジャネイロの観客をくぎ付けにした。男子卓球の面白さを存分に見せつけた。「メダルのうれしさは言葉では言い表せない。卓球界も変わっていくと思う」。胸に輝くメダルは男子エースの意地と責任を果たした証しだった。 (リオデジャネイロ・森合正範)

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