金藤、家族の絆で栄冠　競泳最年長２７歳「応援あったから」

　一度はあきらめかけた世界女王の夢を、家族の優しさでつかみ取った。リオデジャネイロ五輪で競泳女子２００メートル平泳ぎの金藤（かねとう）理絵選手（２７）が、この種目でバルセロナ五輪以来、２４年ぶりとなる金メダルに輝いた。

　タイムを確認し、両隣の選手と健闘をたたえ合う。左手に作った小さなガッツポーズに、九年越しの悲願をかなえた喜びが凝縮されていた。

　女子２００メートル平泳ぎで金メダルを獲得し、日本競泳女子で最年長の五輪メダリストになった金藤選手は、競泳日本代表の主将。夢の舞台まで家族の励ましを背に泳ぎ続けてきた。

　広島県庄原市の生まれ。三人きょうだいの末っ子で、小さいころから父の宏明さん（６１）に泳ぎ方を教わってきた。小学校三年生のときに地元のスイミングクラブに入り、六年生で一六五センチという長身に。だれにも負けない練習量で国内トップスイマーになった。

　二〇〇八年の北京五輪は七位入賞だったが、一二年のロンドン五輪は代表に入れず、「引退」も考えるようになった。一三年の世界選手権は四位。「まだ泳げる」と励ます宏明さんに金藤選手は反発した。「これだけやっても（メダルが取れず）しんどい。分からんのよ、お父さんには」

　すれ違う家族の思い。ひとつになったのは同年十一月にあった姉由紀さん（３１）の結婚式がきっかけだった。由紀さんが企画して制作した金藤選手の応援映像をサプライズで流した。「人生の金メダル」として特注の金メダルを宏明さんからメダルを首にかけられた金藤選手は号泣。再び泳ぎに前向きになれた。

　リオ五輪の開幕前、金藤選手は「あきらめずに続ければ、その先にはすごいことが待っているんだと伝えられるレースがしたい」と語っていた。

　決勝のレースをスタンドで見守った宏明さんは、大きなガッツポーズをして立ち上がり、喜びを爆発。「最高に感動した。あきらめずに頑張ってくれてありがとう」と話した。

　金藤選手は「いろんな八年間だったけど、仲間や戦ってきた選手、家族に応援してもらった。だからこそ私も、世界の頂点を狙ってやってこられたのだと思う」。表彰台に立ち、ようやく笑顔が輝いた。　（リオデジャネイロ・磯部旭弘）