紙面から

柔道女子78キロ超級・山部、成長の「銅」

女子78キロ超級3位決定戦 トルコのサイト(下)を破り銅メダル獲得を決めた山部佳苗=佐藤哲紀撮影

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 開始23秒、組み合って最初の大外刈りで技ありを奪った。女子78キロ超級3位決定戦で、山部が持ち味の技のキレを発揮した。サイトの反撃を制して銅メダルを獲得。「絶対にメダルを持って帰るという気持ちでやった」と笑顔なく語った。

 ロンドン五輪の覇者オルティス(キューバ)との準決勝では、一瞬の判断ミスが明暗を分けた。残り48秒に指導で追いついた直後に有効を奪われた。「追いついた時点で指導で勝つより投げにいこうと思った」。はやる気持ちで奥襟をつかみ、不用意に密着。待っていましたとばかりにオルティスが投げを打ち、畳にたたきつけられた。

 「あそこは前襟をつかんでおけば」と山部。距離を取っても何度か良い形はつくっており、その時に仕掛けられなかったつけが響いた。重量級では珍しく、パワーや重さではなく技のキレで勝負するタイプ。ヤマ場で自ら相手の土俵に乗った要因を、南條充寿監督は「気負い、心と体のずれがあった」と悔やんだ。

 ただ、担当する薪谷翠コーチは3位決定戦までの気持ちの切り替えを評価した。「いつもは負けた瞬間に『もう嫌だ』となっていたが、今回は『行くぞ』という感じで…」。師弟関係を結んで4年。精神面の弱さを指摘され続けた教え子が最後に見せた雄姿に、「成長したと思う」と涙で声を詰まらせた。

 ロンドン五輪直前の2012年の皇后杯全日本選手権で初優勝した時は、五輪は「雲の上」だった。本気になったリオへの道は、2学年上の田知本愛(ALSOK)の背中を追いかけた4年間。実績で先行され、けがも重なり、「畳に上がるのが怖い」と追い詰められた時期もあった。

 「この4年間はつらいことの方が多かった」と山部。全てが報われたとは言えなかったが、「今までやってきたことに悔いはない」という表情には達成感も浮かんだ。 (井上仁)

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