紙面から

柔道男子100キロ超級・原沢 王者追い切れず「銀」

男子100キロ超級決勝でフランスのテディ・リネール(右)に敗れ、しゃがみ込む原沢久喜=佐藤哲紀撮影

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 2階級が行われ男子100キロ超級で24歳の原沢久喜(日本中央競馬会)が決勝で前回ロンドン五輪金メダルのリネール(フランス)に優勢で敗れ、銀メダルとなった。

 女子78キロ超級で山部佳苗(ミキハウス)は準決勝で敗れたが、3位決定戦でサイト(トルコ)に優勢勝ちして、銅メダルを獲得。アンデオル(フランス)が初優勝を果たした。

 日本は男子が全7階級でメダルを獲得。7階級となった1988年ソウル五輪以降で初めて全階級でメダルを獲得した国となった。男女合わせて金3、銀1、銅8の12個で、1大会での過去最多を記録した。 (共同)

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 思い描いた試合運びは全くできなかった。させてもらえなかった。リオ五輪の柔道競技最後の一戦、男子100キロ超級の決勝。ブーイングが響き渡る中、原沢は逃げる王者を懸命に追ったが、最後までつかまえきれなかった。両者ほとんど技を出すことなく、結果は指導1と指導2。「まだまだ足りなかった」。力を出してなお、まともな勝負にならなかった虚脱感からか、試合後は珍しく畳にしゃがみ込んだ。

 決勝の相手は想定どおり第1シードのリネール。この階級で世界選手権7連覇中、ロンドン五輪金メダルの絶対王者だ。身長204センチ、体重130キロ以上と圧倒的な体格を誇る。加えて技術もあり、取り口は恐ろしく慎重。原沢は開始早々に奥襟を取られる不利な体勢をつくられ、わずか8秒で指導を受けた。

 さらに激しい組み手争いでまともにつかませてもらえず、1分すぎには強引な仕掛けを偽装攻撃と取られて二つ目の指導。最後まで反撃の糸口を探ったが、王者に悠々とさばききられた。

 相四つでしっかり組み、内股や大内刈りを駆使するオーソドックスな原沢の柔道では、「普通にやったら普通に負ける」というのが原沢本人の見立てだった。勝機を見いだすためには「異常な何かが必要」と井上康生監督。「ワンチャンスを生かす」ために帯を持っての大内刈りなど奇襲策を練ってきたが封じられ、井上監督は「あそこまで徹底してきた。山は大きかったというところが正直なところ」とうなるしかなかった。

 日本男子が史上初の金メダルなしに終わったロンドン五輪。その直後に発足した井上体制は「重量級の復権」を最大のテーマに掲げ、その集大成は銀メダルだった。口惜しさと、重圧からの解放感と。胸にうずまく感情を、原沢は「本当に金メダルがほしかった」と表現した。 

  (井上仁)

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