紙面から

競泳・金藤、27歳大輪 攻めて会心の「金」

女子200メートル平泳ぎ決勝 優勝した金藤理絵=リオデジャネイロで(ゲッティ・共同)

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 女子200メートル平泳ぎ決勝で、金藤理絵(Jaked)が2分20秒30で金メダルを獲得した。日本の競泳女子で史上5人目の五輪女王で、最年長メダリストとなった。2位のユリア・エフィモワ(ロシア)に1秒67の大差をつけた。

 男子200メートル個人メドレー決勝で、萩野公介(東洋大)は1分56秒61で銀メダル。藤森太将(ミキハウス)は1分57秒21の4位で惜しくも表彰台を逃した。マイケル・フェルプス(米国)が1分54秒66で4連覇を果たし、史上最多の五輪通算金メダル数を22とした。男子200メートル背泳ぎ決勝の入江陵介(イトマン東進)は1分56秒36で8位。ライアン・マーフィー(米国)が100メートルとの2種目制覇を果たした。男子50メートル自由形準決勝の塩浦慎理(イトマン東進)は22秒18の全体16位で決勝に進めなかった。中村克(イトマン東進)は予選18位で敗退。男子100メートルバタフライの藤井拓郎(コナミスポーツ)は予選20位で、女子200メートル背泳ぎの15歳、酒井夏海(スウィン南越谷)は同26位で落選した。(共同)

 「理絵さーん」。力強くピッチを刻む金藤の背に、後輩たちから激励が飛ぶ。

 女子200メートル平泳ぎ決勝。「おまえは世界一、持久力がある。最初の50メートルで出遅れなければ、絶対に負けない。それをおまえ自身が信じろ」。加藤健志コーチの叱咤(しった)に応え、徐々に順位を上げ150メートルをトップでターン。「ここで油断したらいけない」とあとは無心。脇目も振らず、ゴールにタッチした。

 準決勝のタイムは2分22秒11。狙った2分20秒台より大分遅い。キックが水にかからず、十分な推進力が生まれない。レース前、突貫工事をするためにアップの方法を変えた。普段とは違う内容。「去年までの私なら、不満を持ちながらやったと思う」。だが、今の金藤は金メダルへ向かって一直線。アップというより、全力で泳ぎ込んで微調整。何とか「大きく、強く、速く」を取り戻した。

 あとは「攻めろ、絶対に負けるな」という加藤コーチの指示を体現するだけ。金メダルを持ち帰った会心のレースに、師は「生まれて初めて堂々としたレースをした」と驚き、そして目を細めた。

 昨夏の世界選手権の敗戦から立ち上がり、猛練習に耐え、4月の日本選手権で日本女子初の2分19秒台をマーク。27歳の今もなお、進化できることを証明した。ずしりと重い金メダルを「うれしいですね」と見つめる。

 萩野の男子400メートル個人メドレーとともに、金メダルを計算された種目。狙って取る難しさを語った日本代表の平井伯昌コーチは「応援席の若い選手たちが、金メダルを取るところを見ることができた。東京五輪へ必ずつながる」と競泳チーム初の女性主将の大仕事をたたえた。

 表彰台で金藤は「みんなに見られて恥ずかしかった」と笑った。スタンドにチームメートの姿を見つけると、涙があふれ出した。「やっぱり、誰かに喜んでもらえるのはうれしいこと」。仲間の祝福が、最高のご褒美だった。 (高橋隆太郎)

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