日本柔道復権 最多メダル12個
低迷の危機にあった日本柔道が華々しい成果を上げた。男女合わせたメダル計12個は、1992年バルセロナ、2004年アテネの10個を上回り史上最多。男子は全階級で獲得し、7階級になった88年ソウル大会以降では男女を通じて初の快挙。全日本柔道連盟の山下泰裕強化委員長は「日本柔道が完全に復活したと、世界がそう見ていると思う」と誇った。
メダル量産で男女に共通するのが、選手の所属との連携強化と個々の状況に合わせた細かな準備。ロンドン前は世界ランキングを上げることに固執して試合過多となり、代表クラスが疲弊。十分な練習時間も確保できない悪循環のまま本番を迎えた。
今回は出場する国際大会や合宿など、必要性や選手の体調などを代表コーチ陣、所属コーチ陣、選手本人とも相談した上で決定。毎年の世界選手権やことしの五輪といった「本番」に万全の状態で合わせることを明確にすることで、故障防止や無理な減量もなくなり安定感につながった。
最終段階でも女子は直前の全体合宿をなくして所属で仕上げ、移動や普段と異なる環境によるストレスを極力排除。男子もぎりぎりまで国内で調整するため、7階級を3班に分け、試合日が遅い中量級や重量級は後から合流させた。選手の練習相手や身の回りの世話をする付き人も、通常は1人のところを2人ずつ帯同させるなど、かゆいところに手が届くサポートを徹底した。
国別の金メダルは日本の3個が最多で、2個はフランスとロシア。14個の金メダルを10カ国で分け合い、内訳も前評判通りの実力者だったり、ジュニア上がりの新星だったりと、群雄割拠の様相を呈した。東京五輪でさらなる成績向上を目指す上で、山下委員長は「丁寧に、慎重にではなく、この場ではやるかやられるか。金メダルを取った3人はリスクを冒して向かっていった」と型にこだわりすぎず、勝負に挑む勇気を求めた。若手の育成や海外勢に関する広い情報収集も今後の課題となる。 (リオデジャネイロ・井上仁)