アーチェリー・古川、連続メダル逃す 練習量「たこ」のみぞ知る
男子個人準決勝進出を逃した古川高晴=内山田正夫撮影 |
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男子個人が行われ、12年ロンドン大会銀メダルの古川高晴(近大職)は準々決勝でエリソン(米国)に2−6で敗れ、2大会連続のメダル獲得を逃した。決勝は具本粲(ク・ボンチャン=韓国)がバラドン(フランス)を7−3で下し、初優勝した。 (共同)
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取材をするたび、どうしても目がいってしまう。アーチェリー男子個人、古川高晴の左手親指の付け根には白くボコッと膨らんだ「たこ」がある。この1カ所にしっかり力を込めて弓を押さえる。「ペンだこ」ならぬ「アーチェリーだこ」なんて言葉が存在するかどうかは知らない。
気になったので「それって練習のたまものですよね?」と聞いてみた。古川は照れ笑いを浮かべながら「まあ、練習でできたことは間違いないです。でも、他の選手たちにもありますよ」と言って、硬くなったたこを触った。
以前は大学生が1日300本打つのをよそに、倍に相当する600本打ってきた。それが30歳を過ぎ「疲れが抜けにくいから」と450本に減らした。しかし、練習時間は変わらない。朝9時から夕方6時まで、みっちり行う。「ここまで練習をしている日本人はいないと思う」。では、なぜそんなに練習ができるのか。「僕は逆に『なぜ、みんなはそんなにできないんだろう』と思ってしまう」と首をかしげる。
古川の左手の親指の付け根には練習のたまもの、白く膨らんだ「アーチェリーだこ」がある=森合正範撮影 |
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心技体。古川は「アーチェリーは心が95パーセント」だという。だが、正確に言うと、そうではない。誰よりも強い体で技を磨いている。練習量が自信となり、鋼の心を形成しているのだ。だからこそ長年にわたり日本のトップに立ち続けることができる。「僕が他の若い選手に負けるわけないんです」と32歳はニヤッと笑った。その顔には「練習量が違う」と書いてある。
4度目の五輪。ロンドン五輪銀メダリストが準々決勝で敗退した。目標には届かなかった。とはいえ、その過程は間違っていない。誰よりも多く矢を放ち、アーチェリーと向き合ってきた。「この悔しい気持ちがあるからこそ、きつい練習も我慢できる」。敗れてもなお、誇りと証しがある。知る限り、他の日本選手には古川のような大きな「たこ」はない。
(リオデジャネイロ・森合正範)