紙面から

体操男子床運動 白井まさか4位 内村は5位

男子床運動決勝白井健三の演技=今泉慶太撮影

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 男女の種目別決勝が始まり、男子床運動の2013、15年世界選手権王者で優勝候補だった白井健三(日体大)は「シライ2(前方伸身宙返り3回ひねり)」などで失敗が続き、15・366点の4位でメダルを逃した。前回ロンドン五輪銀メダルの内村航平(コナミスポーツ)は15・241点で5位。

 個人総合3位のウィットロック(英国)が15・633点で優勝。あん馬も15・966点で制し、2冠を達成した。床運動の2位に15・533点のイポリト、3位に15・433点の日系3世オヤカワ・マリアーノとブラジル勢が続いた。

 女子ではバイルス(米国)が跳馬を15・966点で制し、団体総合と個人総合に続く今大会3個目の金メダル。段違い平行棒は、ムスタフィナ(ロシア)が15・900点で2連覇した。 (共同)

◆V筆頭「守り」で崩れ 白井 

 取り巻く空気は、他のどの試合とも違っていた。昨年の床運動の世界王者としてたたえるのか、上位につけた地元ブラジル選手のライバルとして見守るのか、どっちつかずの微妙な雰囲気の中で登場した白井。「緊張はしなかった」という表情に、いつものみなぎる生気がなかった。

 冒頭の連続跳躍に続き、予選で大きく着地が弾んだG難度の「リ・ジョンソン」も手堅くまとめた。金メダルへの秒読みが始まる。誰もがそう思ったところで「シライ2(前方伸身宙返り3回ひねり)」が腰砕け気味になった。

 いったん崩れた美しさは元に戻らなかった。「ラインオーバーを気にしすぎた」。後方、前方と続く連続伸身2回半宙返り。着地でつんのめって2歩前に出た。最後の「シライ/ニュエン」(後方伸身宙返り4回ひねり)も着地が動く。演技を終えて広げた両手をすぐ顔の前で合わせ、観客席に頭を下げた。「あの演技をした時点で負けは覚悟していた」

 今の自分を形作ってきた「攻める演技」を忘れた。「予選で攻めすぎて失敗した。中途半端な調整をしてしまったのが良くなかった」。失敗の多くは、着地からフロアの内側に足を踏み出したもの。減点を恐れる守りの姿勢が、確実と思われたタイトルを遠ざけた。

 「まだ明日がある。明日があることに感謝して気持ちを切り替えたい」。今大会最後の出場となる15日の跳馬では、新技の「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」に挑む予定。苦すぎる教訓を、最高の舞台で生かすチャンスは残されている。 (鈴木智行)

◆冒頭減点 踏ん張れず 内村 

 今大会三つ目のメダルへの挑戦は、最初の10秒で終わった。10日の個人総合決勝で腰を痛め、迷いながらも種目別決勝に出場した内村。1番手で登場したロンドン五輪の種目別銀メダリストは本来の演技を見せられなかった。

 「全ては1節目で決まった感じ」。後方伸身宙返り3回半ひねり、前方伸身宙返り1回半ひねりと続く冒頭の連続跳躍。一瞬、止めたように見えた着地は踏ん張りきれず横に跳ね、両足がラインを越えた。いきなり0・300点の減点。着地の少しのずれが左右する種目別の勝負では致命的だった。

 他の着地は何とかこなしたが、3位と0・192点差の5位。「これが現実か」。ラインオーバーがなければメダルが取れていた計算だが、そこにこだわりはなかった。「五輪の舞台で(種目別の)床ができるチャンスがあって、あまり良くない状態でできた。いい経験になった」

 優勝候補筆頭だった白井が敗れた。「やはり、五輪で金メダルを取るのは相当難しい。あれだけ日本を驚かせてきて、期待に応えてきた男でもこんなことがあるんだな」。新旧エースがともにメダルを持ち帰れなかった悔しさは、4年後の東京で晴らす。 (鈴木智行)

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