陸上男子１００ｍ　ケンブリッジ伸びず　１０秒１７で準決勝最下位

　これが世界のトップとの差なのだろうか。準決勝３組でケンブリッジはスタート直後、いきなり隣のガトリンに置き去りにされた。「一気にいかれた。そこから流れに乗れず、自分をコントロールできなかった」。得意の後半の伸びも不発。タイムは平凡な１０秒１７、最下位の７位で悔しさにまみれた。

　予選のさっそうとした走りから一転、動きが硬くなった。世界大会でしか味わえない感覚があった。「世界のトップ選手たちと走るのは初めて。やっぱり経験が大切だと思う。次はもっと走れる」

　準決勝で敗退したが、初の五輪で潜在能力の高さを見せつけた。予選では自己ベスト９秒台の３選手を押しのけ、２着に食い込んだ。いまや９秒台に最も近い日本選手かもしれない。

　東京高で指導した大村邦英総監督は「柔軟性があり、無駄な筋肉がつかない」と特長を挙げれば、日大の渕野辰雄コーチは「ウエストが女の子みたいに細いけど、流れるような走りと後半の加速力があった」と振り返る。

　まだ伸び盛りの２３歳。記者会見が終わった後も「悔しい！」と何度も口にした。「９秒台を早く出して、４年後に挑みたい」

　楽しく、悔しかった初五輪。４年後の東京は笑顔で。それしか考えていない。　（森合正範）