紙面から

テニス 錦織、日本待望の銅 96年ぶりメダル「懸ける思いあった」

男子シングルスで銅メダルを獲得した錦織圭=リオデジャネイロで(佐藤哲紀撮影)

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 男子シングルスの3位決定戦で、錦織圭(日清食品)は6−2、6−7、6−3でナダル(スペイン)を破り、銅メダルを獲得した。テニスで日本勢のメダル獲得は、1920年アントワープ大会で男子シングルスの熊谷一弥、同ダブルスの熊谷、柏尾誠一郎組がそれぞれ銀を獲得して以来96年ぶり。

 決勝はA・マリー(英国)が7−5、4−6、6−2、7−5でデルポトロ(アルゼンチン)を下し、2連覇を達成した。 (共同)

◆トイレ休憩で立て直す

 最終セットの前に、トイレブレークを取った錦織がなかなかコートに戻ってこない。ざわつく客席。ナダルは手持ちぶさたな様子で、コートサイドでダッシュを繰り返した。約10分後、錦織が姿を現すと、待ちわびた観客からはブーイングが起きた。

 だが、錦織は集中していた。第1セットを奪い、第2セットも5−2と決着まであと1ゲームとしながら、自分のミスをきっかけに息を吹き返したナダルに逆転を許した。「アグレッシブになったり、サーブも良くなったり。あれを続けられるとファイナルもまずいかなと」。休憩の間に気持ちを立て直し、最終セットはサーブ、ショットの精度を取り戻した。第4ゲームで先にブレークすると、今大会、ダブルスにも出場して10試合をこなしてきたナダルに、反撃の余力はなかった。

 前日の準決勝はマリーにストレート負けし、「すごくしょぼんとした」とショックを隠せなかった。ただ、五輪には普段のプロツアーにはない3位決定戦があった。「最後の試合だし、自分らしいプレーを心掛けることだけを考えた」と錦織。悪いイメージを引きずらず、日本の男子テニス界96年ぶりの銅メダルを獲得。「(五輪で)最初にメダルを取ったのもテニス。自分もメダルに懸ける思いはあったのでうれしい」とほほ笑んだ。

 歴史的な快挙の余韻に浸る間もなく、米シンシナティの大会に出場する。その後は全米オープンも控える。五輪で力を出し過ぎたことは一抹の不安を残すが、錦織は「体が疲れている中で、集中できた。ラファ(ナダル)に今年2回負けていたので、それを吹っ切る試合になった。銅メダルも、ラファに勝てたのも大きい」と前向きに捉えた。 (リオデジャネイロ・井上仁)

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