紙面から

体操 白井が跳馬で「銅」 土壇場で新技決めた

男子跳馬決勝新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」を決める白井健三の連続合成写真(左から右へ)=共同

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 種目別決勝が行われ、男子跳馬で白井健三(日体大)が新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」を決めるなど15・449点を出し、銅メダルを獲得した。新技は国際体操連盟(FIG)から認定されれば「シライ2」と命名される見通しで、自身の名前がつく技は跳馬で「2」、床運動が「3」の計5個となる。

 跳馬は跳躍2本の平均点で争われる。予選3位通過の白井は1本目で新技を初めて成功させ、全体トップの15・833点。2本目の跳躍「ドリッグス」の着地もまとめ、15・066点を出した。

 白井のメダルは団体総合の「金」に続き、この大会2個目。日本勢の跳馬での表彰台は、1984年ロサンゼルス五輪で「銀」の森末慎二、具志堅幸司以来となった。

 世界選手権2連覇中のリ・セグァン(北朝鮮)が15・691点で金メダル。2位は15・516点のアブリャジン(ロシア)。つり輪はペトルニアス(ギリシャ)が16・000点で「金」。

 女子は平均台をベフェルス(オランダ)が15・466点で制し、団体総合、個人総合、跳馬とここまで3冠のバイルス(米国)は銅に終わった。 (共同)

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 また一つ体操を進化できたことがうれしかった。「銅メダルにびっくりじゃなくて、あの3回半を跳べたことにびっくり」。初の五輪で最後の演技となった種目別跳馬で、白井は自分だけでなく世界を驚かせた。

 2013年に発表した「シライ/キム・ヒフン」から、ひねりを半分増やした「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」。Dスコア(演技価値点)は前者の6・0点から6・4点に跳ね上がる。種目別の勝負に必要な技と見定め、ことしから本格的に練習してきたが、6月の全日本種目別選手権ではひねりが足りず失敗していた。

 注目の1本目。白井は本命視されながら4位に終わった前日の床運動から一転、軽やかな助走から踏み切った。「気持ち良くやろうと思っていた。挑戦者の気分で」。練習では体の回転方向にしばしば足を踏み出し、減点となるラインを越えていたが、この日は踏みとどまった。

 代表コーチとして帯同する日体大の畠田好章監督が「練習を通じても初めてラインオーバーがなかった」という鮮やかな実施。Eスコア(実施点)も9・433点を稼ぎ、合計点で全体トップとなる驚異的な15・833をマークした。

 2本目との平均で世界選手権を4度制覇したマリアン・ドラグレスク(ルーマニア)と並んだが、同点の場合はいずれかの跳躍で点数が高い選手が上位となる。果敢に挑んだ大技が表彰台につながった。

 相変わらず、技に自分の名前が付くことに興味はない。「FIG(国際体操連盟)さんからのプレゼント。自分が大きな壁を乗り越えたご褒美だと思う」。過去の栄光を振り返らない白井らしい言葉だった。 (鈴木智行)

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