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体操 白井、有終の「銅」 新技決め最高点マーク

男子跳馬決勝白井健三の跳馬=リオデジャネイロで(今泉慶太撮影)

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 種目別決勝を行い、男子跳馬の白井健三(日体大)は新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」を決めるなど15・449点で、銅メダルを獲得した。新技は国際体操連盟から認定されれば「シライ2」と命名される見通しで、自身の名前がつく技は跳馬で「2」、床運動「3」の計5個となる。

 跳馬は跳躍2本の平均点で争われる。白井は1本目で新技を初めて成功させ、全体トップの15・833点。2本目の跳躍「ドリッグス」でも15・066点を出した。

 日本勢の跳馬での表彰台は、ロサンゼルス五輪で「銀」の森末慎二、具志堅幸司以来32年ぶり。白井のメダルは団体総合の「金」に続き、この大会2個目となった。

 世界選手権2連覇中のリ・セグァン(北朝鮮)が15・691点で優勝し、2位は15・516点のアブリャジン(ロシア)だった。つり輪はペトルニアス(ギリシャ)が16・000点で「金」。女子は平均台をベフェルス(オランダ)が15・466点で制し、団体総合、個人総合、跳馬とここまで3冠のバイルス(米国)は「銅」だった。 (共同)

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 積み重ねてきたものを五輪で出し切りたいという願いが、自らの体に美しい軌道を描かせた。「たった3、4秒の跳躍だったかもしれないが、僕の1年の全てが詰まっている」と白井。リオ五輪への準備期間のみならず、挑戦し続けてきた競技人生を象徴する跳馬だった。

 新技の「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」。踏み切り板の前で転回したあと後ろに跳んで手を着き、後方伸身宙返りの間に3回半ひねる。持ち技の「シライ/キム・ヒフン」から半ひねり加えるだけだが、昨秋から本格的に取り組み始めると「まるで別の跳躍」と気付いた。

 ひねりが増えて余裕がなくなるのはもちろん、着地は前向き。足元を見にくい分、止めるのが難しくなる。「上半身が振り回され、立ってもラインオーバーになる」。踏み切り、跳馬への着手などを一から見直した。スポンジを敷き詰めた「ピット」に降りる時はうまくいくが、試合と同じマットでは恐怖心が先に立った。「まずは3回半、やってみること」。尻もちをついても、背中から落ちても繰り返し跳んで感覚をつかんだ。

 代表に選ばれるため、確率の高い技を磨く選択肢もある。白井にとっては、未知の技に挑むことが体操への意欲をかき立てる一番の方策。個人総合で内村に続く2位に入った4月の全日本選手権でも、それを証明した。

 この日の出場者の全跳躍で最も高い15・833点。審査基準の厳しい日体大の畠田好章監督をして「最高」と言わしめた演技で初の五輪を締めた。「満足感でいっぱい。日本に帰ったら大学のみんなと楽しみたい」。少し休んで、越えるべきハードルをまた探す。 (リオデジャネイロ・鈴木智行)

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