紙面から

陸上男子200m 30歳藤光が初舞台 「あと4年、やること山ほど」

男子200メートル予選レースを終え、引き揚げる藤光謙司=佐藤哲紀撮影

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 陸上男子200メートルの光と影。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が「最後の五輪」と位置付けた4度目の大会に臨めば、同じ1986年生まれ、30歳の藤光は初の五輪に挑んだ。一般的に25、26歳でピークを迎える短距離界では異例のことだ。「安井先生とやってきたことが正しかった。それが証明できてうれしい」

 日大にスカウトした安井年文コーチの持論は「人間も競走馬と同じ。一生の中で全力で走れる本数は決まっている」。特に藤光の場合はサラブレッドと同じガラスの脚。出力が高すぎて速さに体が耐えきれない。右脚、左脚、腰…。全力で走るたびにどこかを痛め、五輪を逃してきた。

 息の長い選手になるため、大学時代からあえて練習量を少なくした。全力で走りたい。でも走らない。不安と葛藤。安井コーチと藤光は信じていた。

 「僕は他の人に比べて、練習で走るのは半分以下。周りからはもっと練習した方がいいと言われたこともある。でも、これしかすべがなかった」

 日本人は練習しすぎてしまう。学生のときからすぐに結果を求めてしまう。酷使してつぶれていった選手を何十人と見てきた。藤光と安井コーチからのメッセージ。「人生で走れる本数は決まっている。だから焦らず、長い目で見た方がいい」

 200メートル予選。ボルトの余裕の走りは華麗で美しかった。「光」の疾走から4レース前、ガラスの脚で走りきった。30歳でたどり着いた五輪の舞台。「影」が輝いた瞬間だった。

 タイムは平凡な20秒86で5組6着。惨敗。「ほろ苦い五輪デビューでした。でも、これで終わりではない。ようやくつかみ始めたところ。あと4年、できることは山ほどある」。まだ成長段階。走れる本数は残っている。まばゆい光を放つのは、2020年東京五輪になる。 (森合正範)

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