紙面から

レスリング58キロ級・伊調 冷静V4、残り3秒での逆転劇

女子58キロ級で4連覇を達成、日の丸を広げて喜ぶ伊調馨=共同

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 女子の3階級が行われ、58キロ級の伊調馨(ALSOK)、48キロ級の登坂絵莉(東新住建)、69キロ級の土性沙羅(至学館大)の3人がいずれも金メダルを獲得した。

 伊調は決勝でコブロワゾロボワ(ロシア)に逆転で判定勝ちした。伊調はロンドン五輪までは63キロ級で3連覇しており、この優勝で五輪全競技を通じて史上初の女子個人種目4連覇を達成した。

 初の五輪に臨んだ登坂は決勝で、前回ロンドン五輪銀メダルのスタドニク(アゼルバイジャン)に逆転で判定勝ち。この階級での日本勢の「金」は、前回ロンドン五輪の小原日登美に続く2大会連続となった。

 土性は決勝でロンドン五輪72キロ級金メダルのボロベワ(ロシア)を内容差で下して優勝を果たし、階級区分変更後、新たに実施された階級の初代女王となった。 (共同)

 ▽女子48キロ級3位決定戦 孫亜楠(中国) Tフォール54秒 エシモワ(カザフスタン)▼ヤンコバ(ブルガリア)7−6ベルムデス(アルゼンチン)▽同決勝 登坂絵莉(東新住建)3−2スタドニク(アゼルバイジャン)▽女子58キロ級3位決定戦 アマリ(チュニジア)6−3ラトケビッチ(アゼルバイジャン)▼マリク(インド)8−5ティニベコワ(キルギス)▽同決勝 伊調馨(ALSOK)3−2コブロワゾロボワ(ロシア)▽女子69キロ級3位決定戦 シジコワ(カザフスタン)7−4アハメド(エジプト)▼フランソン(スウェーデン)2−1イーツ(カナダ)▽同決勝 土性沙羅(至学館大)2−2(内容勝ち)ボロベワ(ロシア)

 偉業を目前にし、女王は追い詰められていた。この日のために磨いてきた多彩な攻撃を披露できず、試合の主導権も握れないまま刻々と時は過ぎていく。最後に頼ったのはすでに三つの金メダルをつかんできた経験と勘。とどめを刺しにきた相手を冷静に仕留めた。

 「自分が攻めにいくことを考えていたけど、相手が攻めてきた。ラストチャンスかなと思った」。1−2で残り30秒。タックルで右脚を捉えられた。たたらを踏んでこらえながら、頭を巡らせた。「これを切ったら勝てる」

 相手の上に覆いかぶさり、左足を背後からつかんだ。そのまま体勢を入れ替えながら脚を伸ばすと、相手の両腕が外れた。背後を取って3−2。先に決勝を終えた登坂に続くように、残り3秒での逆転劇を演じた。

 審判に手を上げられても、なかなか勝者の表情はつくれなかった。「もっといい試合をしたかった悔しさと、申し訳ない気持ちでいっぱい」。2012年ワールドカップで吉田沙保里を倒したこの相手とは、14年世界選手権で対戦して勝利。自分を徹底して研究してきた相手の守りは堅く、第1ピリオドは無理に脚を取りにいってカウンターを食らった。

 自己採点は、昨年の世界選手権の「25点」を下回るかと思われたが「金メダルに免じて30点」。今年1月の13年ぶりの敗戦で周りを心配させ「五輪は勝ちにもこだわる」と戒めただけに、期待に応えた自分を評価。「ただ、レスリング選手としては『出直してこい』という感じ」。4度目の栄冠とともに、競技の新たな奥深さにも巡り合えた。(鈴木智行)

 <伊調 馨(いちょう・かおり、ALSOK=レスリング女子58キロ級)> 五輪は63キロ級で04年アテネから08年北京、12年ロンドンと3大会連続の金。世界選手権は10度優勝。愛知・中京女大付高(現至学館高)、中京女大(現至学館大)出。166センチ、61キロ。32歳。青森県八戸市出身。

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