紙面から

レスリング48キロ級・登坂 折れぬ心「私は強い相手に強い」

アゼルバイジャンのマリア・スタドニク(左)を破り、喜ぶ登坂絵莉=リオデジャネイロで(代表撮影)

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 朝起きた時は「負ける気がしなかった」という22歳が、試合中は心を乱した。女子48キロ級決勝。五輪という舞台で金メダルを奪い合う格闘がどれほど厳しいか、登坂は思い知った。勝てた理由は一つ。「何が何でも金を取る、という気持ちが最後に相手を上回った」

 序盤はロンドン五輪銀メダルのスタドニクに圧倒された。開始1分、左脚とともに首も押さえる巧みなタックルから逃げられず、場外に出されて先制点を失った。「負けてたまるかと思ったけど、ひるむ部分もあった」

 強い気持ちを取り戻すのに時間はかからなかった。第1ピリオド終了後、セコンドを務めた栄和人チームリーダーの「相手が頭を押さえてきた時、足を前に出すな」と具体的な指示を受けて「落ち着いた」。第2ピリオドは均衡した展開に持ち込んだ。

 警告で1点を取り合い、1−2で迎えた終盤。体力が消耗したスタドニクを終了間際のタックルで仕留めた。背後を取ったまま試合終了。至学館大でも指導を受ける栄チームリーダーの胸に飛び込むと「後で監督を肩車しますから」と言い、勝ち名乗りを受けにマットへ戻った。

 スタドニクは初戦を40秒で終わらせるなど圧倒的な強さで勝ち進んできた。「でも私はそういう相手に強い。絶対的な勝ち方はできないけど」。栄チームリーダーも「相手がいつの間にか負けてしまう。組みたくないと思わせるタイプ」と評す。吉田沙保里や伊調馨とはまた違うタイプの強さで新女王の座に駆け上がった。 (鈴木智行)

◆登坂 一問一答

 喜びと感激で、表情はくるくると変わった。そして登坂は最後に満面の笑みを浮かべ、メダルを掲げてみせた。 (共同)

 −五輪で金メダル。

 「最初はうれしいな、やったなと思い、少ししてから感謝の気持ちでいっぱいになった」

 −日の丸が揚がって涙があふれた。

 「いろんなことを思い出して、泣けてきた」

 −ずっと劣勢だった。

 「まさかあんなに早いうちに失点すると思っていなかった。最後30秒くらいで、このまま負けちゃうんじゃないかと思った」

 −大逆転だった。

 「どう相手の足を取ったのかも覚えていない。取ってからは絶対離さないという気持ちだった」

 −一緒に練習している吉田沙保里さんの試合の前に金を取った。

 「五輪で一緒に『金』を取れたらいいね、と話していた。早く沙保里さんに見せたい」

 −次は東京五輪。

 「初めて五輪に出て、すごさを感じた。これが東京だったらもっとすごいことになる。わたしが出て2連覇したい」

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