紙面から

レスリング・吉田 包囲網に屈す 高速タックル防がれ「空回り」

女子53キロ級決勝で米国選手に敗れ、泣きながらマットに向かい一礼する吉田沙保里=リオデジャネイロ(共同)

写真

 女子63キロ級で2015年世界選手権2位の川井梨紗子(至学館大)は決勝でママシュク(ベラルーシ)に6−0で判定勝ちし、金メダルを獲得した。

 53キロ級の吉田沙保里は決勝で15年世界選手権55キロ級優勝のマルーリス(米国)に1−4の判定で敗れて4連覇を逃し、銀メダルだった。渡利璃穏(アイシンAW)が初戦の2回戦で敗退した75キロ級はウィービー(カナダ)が制した。

 日本勢は女子6階級のうち4階級で優勝し、メダル5個を獲得した。 (共同)

 最初に五輪を制してからもう12年。その間、同じ階級の選手誰もが吉田を倒すために心血を注いできた。強くあり続けることでレスリング女子のレベルを引き上げてきた第一人者が、時代の波にのみ込まれた。

 「相手の押しが強かった。どうしても私に勝ちたいんだな、と伝わってきて空回りしてしまった」。決勝の相手、マルーリスは低い構えからどんどん距離を詰め、代名詞の高速タックルを防ぎに来た。

 近年は接近戦で崩してからのタックルも多用する吉田だが、手をつかまれては思うように相手をコントロールできない。第1ピリオドは相手の警告による1点リードで終えたが、第2ピリオド早々に逆転を許した。それでも、最後は吉田が何とかするだろうという空気が漂っていた。

 残り約1分、足をつかまれた吉田が場外に出ると様相が一変する。1失点かと思われたが、背後を取られたとして2点を失い1−4。「最後に大きな点差をつけられると取り返すのが大変。私は勝つ方でそれを分かっていたのに」。逆の立場で心掛けていたことを相手にやられ、敗色は濃くなった。「大きな舞台で負けるのは初めて。すっごい悔しい」

 14日にあった現地入り後の会見。大会序盤の印象を問われて口にした。「いろんな競技を見る中で、勝てる選手でも負けてしまったりとか、有力視されてる選手が負けてしまったりした。難しいところがあるのが五輪」。これまで意識しなかった思いが胸の内を占めていた。一つの集大成ととらえていた舞台で、懸念は現実のものになった。 (鈴木智行)

◆一夜明け「すっきり」

 【リオデジャネイロ=鈴木智行】レスリング女子で金メダルを獲得した4人と53キロ級銀メダルの吉田沙保里、バドミントン女子ダブルスで優勝した高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)が19日、当地で会見した。五輪4連覇を逃した吉田は「試合後はすごく泣いて心配をかけたけど、1日たって結構すっきりした」と心境を語った。

 優勝した後輩4人を「自分も金を取ったぐらいうれしい」と祝福した吉田は「今はゆっくりしたい。温泉に行ったりおいしいものを食べたりしたい」。2020年東京五輪への臨み方を問われると「できれば目指していきたいが、これからゆっくり考える」と進退への言及は避けた。

写真

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。