紙面から

荒井が銅 競歩初 レース中接触 失格から一転

陸上男子50キロ競歩で銅メダルを獲得した荒井広宙=佐藤哲紀撮影

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 リオデジャネイロ五輪・陸上男子50キロ競歩の荒井広宙に日本陸連の職員が興奮した様子で報告した。「荒井、銅メダルが決まったぞ」。うれしい知らせが届いたのは、沿道で同女子20キロ競歩の日本選手を応援していた時。ゴールから三時間半が過ぎていた。

 問題は残り800メートル付近で起きた。カナダのダンフィーに追い抜かれ四番手に落ちていた荒井がスパートをかけ、再び前に出る。その際、荒井の右腕とダンフィーの左腕が接触し、ダンフィーがよろめいた。荒井は三位、ダンフィーは四位でゴールした。直後、カナダチームは「妨害行為」として、レースの審判長に抗議した。

 レース後、荒井によると、「ダンフィーから『ソーリー』と謝られた」といい、不必要な抗議を申し訳なく感じているようだった。互いにハグをして健闘をたたえ合い、笑顔で別れた。「僕は悪いと思っていないし、故意でもない。相手も怒っていない。カナダチームの上の判断だと思う」と話した。

 日本陸連によると、抗議自体は「やり得」の側面があり、さほど珍しくないという。が、ゴールから約一時間後、審判長が下した判断は「荒井失格、ダンフィー三位」。カナダ側の抗議が認められた。

 日本陸連はすぐに国際陸上競技連盟(IAAF)の評議会に上訴。日本から取り寄せた映像と「接触した数秒後にもダンフィーはよろけている。接触との因果関係はない」との文書を提出した。評議会のメンバー五人による多数決で、日本の主張は認められ、荒井の三位が確定した。

 日の丸を掲げた荒井は報道陣の前で「接触はよくあること。失格と聞いたときは『なんでかな』と思った。銅メダルは純粋にうれしい」と安堵(あんど)の表情を見せた。 (森合正範)

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