紙面から

男子50キロ競歩・荒井「共歩」で銅 先輩とつかんだ日本初メダル

3着でゴールする荒井広宙=代表撮影

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 ラスト1キロの激しい競り合い。4番手に落ちていた荒井がスパートをかけ、残り800メートル付近で再び前に出た。両手を広げて3着でゴール。4着の選手と接触して進路を妨害したとして一度は失格となったが、日本側の抗議が認められて日本競歩に初のメダルをもたらした。ドタバタ劇はあったが「本当にうれしい。先輩たちのやってきたことを形にできた」。

 しばらくして、5歳上の谷井がゴールした。先輩から「おめでとう」と祝福され、荒井は「ありがとうございます」と抱き合った。

 二人の朝は一杯のコーヒーから始まる。埼玉県朝霞市の寮。荒井の部屋を谷井が訪れ、コーヒーをすすりながら練習メニューを話し合う。同じ所属となった2014年春からの日課。谷井の指示で一緒に歩く。「頼ってばかりではいけないけど、実際はコーチみたい。同じ競技者なのにすべてを包み隠さず教えてくれる。自分を高めてくれる先輩」と感謝する。

 昨年の世界選手権(北京)では谷井が銅メダル。荒井は4位。今村文男競歩部長は「身近な谷井のメダルを取るための練習、振る舞いを見ていた。今回のパフォーマンスに大きな影響があったと思う」と分析した。

 リオでも、25キロ手前までは一緒に歩いた。ここからは、いつもと違う光景。先輩の前を歩く。それが恩返しだった。「谷井さんと合宿することで質を上げられた」。谷井は14位だったが、ここまでの道のりはともに歩んできた。先輩がいたから、ここまで来られた。「共歩」でつかんだメダルだった。 (森合正範)

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