紙面から

レスリング・樋口、東京で頂点 20歳の新星、つかんだ銀

男子フリー57キロ級決勝相手の足を狙う樋口黎(左)=リオデジャネイロで(代表撮影)

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 男子フリースタイル57キロ級の樋口黎(れい=日体大)は決勝で、前回ロンドン五輪55キロ級2位のキンチェガシビリ(ジョージア)に判定負けし、銀メダルとなった。高谷惣亮(そうすけ=ALSOK)が3回戦で敗れた74キロ級は、ヤズダニチャラティ(イラン)が制した。

 男子の日本勢が出場する4階級がすべて終わり、メダルはグレコローマンスタイル59キロ級の太田忍(ALSOK)の「銀」と合わせ2個だった。 (共同)

 163センチの体を精いっぱい伸ばし、ガッツポーズをとった。男子フリースタイル57キロ級で銀メダルの樋口にとって「高校時代から映像で何度も見てきた」という軽量級のスターから準決勝で奪った金星が、大きな意味を持った。

 「いろんな重圧があったけど、楽しんで自分のレスリングを出し切った」。多くの観客を驚かせた準決勝。昨年の世界選手権2位のラヒミ(イラン)をマットの端々まで追い回し、二つの得意技を繰り出した。

 まずは片足タックル。特別速く、パワーがあるようには見えないが、差し出した手になぜか相手の足がすっぽり収まる。「相手の体重が前の足にかかった時や、足を前に出した時に入る」とタイミングに自信を持つ。

 アンクルホールド(足固め)は、アテネ五輪フリー55キロ級3位で日本男子きっての技巧派と言われた警視庁の田南部力コーチらの映像を参考に、自分なりにアレンジしたという。「研究されてもかかる技が本当の技。警戒されても取れる自信と技術がある」と豪語する。

 ただ、キンチェガシビリとの決勝では若さも出た。片足タックルで組み伏せることにこだわりすぎて得点機を失った。「場外に運んで1点稼ぐことも必要だった」。試合運びの未熟さが敗因となった。「決勝も勝てる試合だった。最後、金メダルを取れなかったことは悔しい」。やり残したことは4年後の東京へ。「ロンドンからリオもすぐにきた。一日一日を大切にしたい」。20歳の新星が新たな誓いを立てた。 (鈴木智行)

◆レスリング 充実7メダル

 レスリングは19日、日本代表の男女10選手がすべて出番を終えた。女子は金メダル4個、銀メダル1個と大活躍し、メダルゼロも懸念された男子もフリー、グレコローマン両スタイルで銀メダルを1個ずつ獲得した。日本協会の強化本部長を務める栄和人チームリーダーは「心配はあったが、各スタイルでメダルを取れたのは良かった」と振り返った。

 女子は苦戦が予想された75キロ級を除いて全選手が決勝に進み、初出場の3人がそろって金メダル。48キロ級を制した登坂絵莉(東新住建)が22歳、63キロ級の川井梨紗子、69キロ級の土性沙羅(ともに至学館大)は21歳。4年後の東京五輪で柱となり得る選手が結果を残した。五輪4連覇を目指した伊調馨(ALSOK)は金、吉田沙保里は銀と明暗を分けたが、内容は紙一重だった。

 男子は昨年の世界選手権(ラスベガス)で5位以内に与えられる五輪出場枠を一つも獲得できず、五輪予選を突破したグレコ、フリー各2選手の出場にとどまった。その中で1952年ヘルシンキ五輪から続く(不参加のモスクワ五輪を除く)、メダル獲得大会を「16」に伸ばした。フリーの和田貴広、グレコの西口茂樹両強化委員長は「もっと多くの階級に選手を参加させたかった」と話した。 (鈴木智行)

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