紙面から

伝統の力で加速 陸上男子400リレー アンダーパス改良

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 男子400メートルリレー決勝で山県亮太(セイコーホールディングス)飯塚翔太(ミズノ)桐生祥秀(東洋大)ケンブリッジ飛鳥(ドーム)の日本が37秒60の日本新記録で2位に入った。メダル獲得は2008年北京大会の銅以来で2大会ぶり。ジャマイカが37秒27で優勝し、ボルトは3大会連続の3冠に輝いた。

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 9秒台の選手もファイナリストもいない。しかし、4人でアジア新記録となる37秒60をマークした。相手チームのミスはなく、実力で勝ち取った銀メダル。そこには日本伝統のアンダーハンドパスがある。日本陸連の苅部俊二短距離部長は「日本人には技術がある。バトンパスワークは世界一」と胸を張る。

 日本はバトンをもらう選手が手のひらを地面に向け、渡す側がバトンを下から差し込む「アンダーハンドパス」が伝統になっている。運動会のように、手のひらを上に向けて受け取る「オーバーハンドパス」よりスムーズに加速ができる。

 昨年から従来のアンダーハンドパスを改造し、受け手と渡し手が互いに腕を伸ばし、距離を50センチほど稼いできた。バトン受け渡しが許されるテークオーバーゾーンの20メートルと前後10メートルを合わせた40メートルを3秒75で通過することを目標に掲げ、精度を上げてきた。

 走順にも気を配る。第3走者はカーブを高速で回る走力が必要だ。アンカーは焦り、早く飛び出す可能性があり、そうなった場合に追いつく一瞬のスピードが求められる。ここに桐生を起用した。代表経験の浅いケンブリッジをアンカーにして、受け手だけで負担を軽くする。持ち前の後半の爆発力を生かす。これが成功した。

 苅部部長は「100点あげていい」と称賛する。日本チームにしかできない、技術と戦略でつかんだ銀メダルだった。 (森合正範)

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