◆情勢
20年で人口が16万人超に倍増した中央区。8期32年務めた現職が出馬せず、無所属の新人5人による選挙戦となった。現職による後継指名の是非のほか、築地市場跡地の活用、区内に選手村を抱える2020年東京五輪・パラリンピック、人口増加への対応などが争点。日本橋、京橋地区と、月島、勝どきなど新たな住民の多いベイエリアの融合も課題だ。
政治団体代表の熊倉哲也さん(55)は後継指名に「一区民として疑問」と反発。築地市場跡地について、区民の意見を反映した再開発プランをまとめる考えだ。食育事業組合代表の梅原義彦さん(67)は、屋上緑化を軸とした築地跡地活用プランを主張。ヒートアイランド現象の緩和や防災面の効果を訴える。
ジャーナリストの上杉隆さん(50)はインターネットを積極的に活用し、区民の提案を政策に反映したい考え。「自分を媒体として使って」とアピールする。
立憲民主、共産、自由、社民が推薦する元環境省職員の西田主税さん(56)は行政経験や交渉力をアピール。「古い体質の行政には新しい力が必要」と主張する。
後継に指名された山本海苔店相談役の山本泰人さん(70)は自民、公明の推薦を受け「継続の中の発展を目指し、変えるものと変えないものを判断したい」。(杉戸祐子)
◆候補の横顔(届け出順)
◇熊倉哲也さん(55)
約30年間勤めた総合宝飾会社を辞め、退路を断っての出馬。経営企画部門で中長期ビジョンや予算の取りまとめに関わり、「粘り強く交渉することを学んできた」と振り返る。2016年、小池百合子東京都知事の率いる政治塾に入り、政治活動を始めた。選挙でのボランティア活動を重ね、18年から「地域課題を解決する会」を率いる。「自分はスーパーエリートではないが、人と人をつなぎ、皆の能力を最大限発揮してもらう仲介役に適している」と自任する。オフタイムにはブルースハープと呼ばれるハーモニカの演奏で気分転換する。
◇梅原義彦さん(67)
ゴルフは小学3年から始めた。ゴルフスクールを2009年まで経営し、現在もコーチングを引き受ける。天然芝の練習場をつくりたいと考えて調べるうち、屋上緑化に関心を持った。屋上は災害時の避難場所ともなるため、「屋上農園で野菜を作れば非常食にもなる。畑のない中央区で普段から収穫し、銀座や日本橋の飲食店で出せば地産地消が実現し、子どもたちの食育になる」と思い描く。15年中央区長選、16年港区長選に続く挑戦。築地市場の跡地について「一石を投じたい」。屋上緑化を軸とした再開発プランを都に提示したい考えだ。
◇上杉隆さん(50)
衆院議員秘書を経て、ジャーナリストなどとして活動。50歳を迎え、「欲がなくなり、社会のため、人のためという気持ちになった」。1月、京都・聖護院門跡で得度した。勝どきに20年住み、月島、晴海など湾岸エリアの人口急増を体感してきた。江戸時代から栄えた日本橋、京橋地区を「日本の文化の中核」と位置付けた上で「伝統を生かしながら新しい住民を巻き込みたい」。区民の提案を政策に吸い上げるため、「自分を媒体として使って」と訴える。情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)の区政への積極活用も模索する。
◇西田主税さん(56)
環境省の官僚として約30年間働いた。北九州市の農家に生まれ育ち、「田植えを手伝い、リヤカーに野菜を積んで売り歩いた経験から、経済官庁ではなく、弱者の立場で考える省庁で働きたいと考えた」。外務省や世界銀行に出向し、国連環境条約交渉や環境開発問題に携わった経験をふまえ、「交渉力と実行力を区政に生かしたい」と目指すリーダー像を語る。「忠臣蔵」の主人公の長男・大石主税にちなんで名付けられた。自身は真田幸村に引かれるという。「恩顧のある豊臣方につき、徳川家康を追い詰めた。自分も信念で生きたい」
◇山本泰人さん(70)
家業の海苔(のり)店で副社長を務め、商品開発に携わってきた。朝食やおにぎりに出番が限られていた海苔を食べてもらう機会を増やそうと、ゴマやウメなどをはさんだ新商品を手掛け、約10年をかけて定番に育て上げた。利益が出るまで年月を要したが「時代の期待に応えられる」と周囲を説得した。「新しい需要に応えるには企業に変化が必要。変化に対応が求められるのは行政も同じ」。高校時代に始めた剣道を半世紀以上続け、7段の腕前を持つ。「不動心や物事を冷静に見る目の付け方は剣道で養われた」。毎朝の素振りが日課という。
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