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<注目の選挙区>北区長選 35歳、68歳、84歳が激突

◆情勢

 高齢多選を巡る対決が注目を集めそうな東京都北区。音喜多駿さん(35)が都議を辞めて挑戦を表明、市民団体代表世話人の川和田博さん(68)も名乗りを上げ、区市長で全国最高齢の現職として5選を目指す花川与惣太さん(84)に挑む。

 「同じ人間が権力に居続けると腐敗する。80代の区長では若い声が届かない。令和の時代に、新しい風を吹かせてください」。音喜多さんは今月4日、JR十条駅前で声を張り上げた。高齢多選批判の矛先は、同じ亥(い)年の年男で4回り差の花川さんだ。

 「愛着が持たれない」として「北区」の名称変更を提案し、住民投票に諮るなどの公約を掲げる。インターネットの活用にも力を入れ、自身が代表の地域政党「あたらしい党」のポスターにスマートフォンをかざすと、PR動画が流れる。街頭演説に加えて意見交換会も重ね、無党派層への浸透を図る。

 その2日後、花川さんは区内の住民のイベントであいさつし、子育て施策の推進など4期16年の実績をアピール。「投開票日は(84歳の)誕生日で、当選すればまさに日本一。さらに良い北区を」と高齢多選批判を逆手に取ってみせた。

 本紙の取材に「年齢(による健康状態)には個人差がある。積み重ねてきた実績は区政の原動力だ」と強調。政党推薦はないが、毎日のように区議選出馬予定者の応援に入った。スマホのモニターを指でなぞる動きをまねて「こんなことはできなくても、こちらのペース。街に出るか、座って戦うかの違いだ」。

 一方、川和田さんは、道路建設反対の住民運動や子ども食堂の運営に取り組む区民らが、区政課題の勉強会や懇談会を開く中で擁立された。共産が推薦し、街頭に立って区民に思いを訴える。首長の高齢多選には「元気な限りは続けていいと思う」と争点にしない方針だが、花川区政に対しては「生活に苦しむ区民に寄り添っていない。現区政の姿勢自体が問題」と容赦ない。音喜多さんの区名変更などの議論には「聞こえのいい政策を並べても区民は望むのか、実行できるのか疑問だ。選挙は政策を訴えて信任を得るもので、単なる人気投票ではない」と持論を展開した。(中村真暁)

◆候補の横顔(届け出順)

◇音喜多駿さん(35)

 「長期政権による明確な規律の緩みで、弊害が起きている。区政が変わらなければ、取り返しがつかない」と、都議の任期を残し、出馬を決めた。東日本大震災の惨状を目にし、「いつまで命があるかも分からない。今挑戦しないと後悔する」と、27歳で政治家を志す。昨年10月には地域政党「あたらしい党」を立ち上げた。広報戦略として、「北区」の区名変更を提案する住民投票を公約に盛り込み、「情報公開を徹底し、区民と向き合っていく」。学生時代から十五年ほど、ブログを毎日書き続ける。妻と子ども2人の四人暮らし。

 

◇川和田博さん(68)

 「どんなときも住民が主人公の街に」。強い思いで、2回目の区長選に挑む。前回選挙後は反原発や反戦運動、市民と野党の共闘に向けて奔走した。市民活動などに取り組む有志と、昨年夏ごろから区政課題の勉強会や懇談会を開催。区長選の候補者擁立に向けて発足した市民団体「未来のまちをつくる会・北区」では代表世話人に就いた。「こうした団体から出馬できる誇りと責任を感じる」と気を引き締める。生まれも育ちも北区。区内では公園などの自然が残るエリアが好きで、よく訪れる。2人の子どもは独立し、妻と2人暮らし。

 

◇花川与惣太さん(84)

 全国の区市長で最高齢。投開票日で84歳だが、少年野球の始球式で力強い投球をするなど、元気いっぱいだ。区の優先課題「長生きするなら北区が一番」を自ら実践してきた。日々の健康法は街へ出ること。区民からもらうエネルギーを、区政にも反映させるという。「人には任せられない」と、妻と暮らす自宅では食器洗いや洗濯を担っている。出身地は岩手県釜石市。上京後に住んだ北区で、「人のためになる」と決意したのが政治の原点。区議、都議を経て、区長を4期務めた。自己評価は「100点満点」と胸を張る。

 

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